四章

浜辺で拾った瓶

 実家の近くには海があり、砂浜がある。子供のころは潮干狩りで浅利をとったりしていた。大人になって実家に帰ると、例の砂浜が埋め立てられると聞いた。最後となるかもしれないので、砂浜を歩いてみた。

 波打ち際まで歩いて、海水が靴にかかるくらいに近づくと、数歩先で光る何かを見つけた。

 光る物は、どうやら瓶のようで、半ば埋まっていた。しゃがんで掘り出すと、大きさは手のひらに乗るくらいだった。透明の瓶の中をみると、茶色に変色した紙が折りたたまれて入っている。瓶の蓋を開けて逆さにすると、紙が手に落ちてきた。

 小さく折りたたまれた紙を開くと、文章が書いている。

 『今日の日付と、自分の名前、そしてお前はまたここに来るだろう』

と書かれていた。

 紙はどう見ても古く、瓶もさながら海中をさまよっているように見える。寒気がした。

 何かのいたずらと思い。瓶を投げ捨てる。そもそも、ここは埋め立てられるのだ。来たくても来ることはできない。


 殺されて海中にでも投げ込まれなけれるか、死体になって埋められない限りは……。

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