リサイクル屋で買った家具

 座っているより立っているのがいいらしいということで、立ち作業ができる机を探していた。色々な店を回っていると、ちょうどいい机が近くのリサイクルショップでみつかったので、購入し家に運んでもらった。どこかの家から安く譲り受けた机だということだ。

 今まで使っていた机を引き取ってもらい、新しい机を設置した。わずかに表面に傷があったが、気にせず机を使っている。在宅勤務もあるので、机は活躍しているが、なぜか表面の傷が増えていく。文字として読めるかどうか微妙な感じだ。どれだけ丁寧に使っても表面に傷が増えていく。 

 増えるのは、どうやら机の高さを下げて、座って机に向かっている時だった。立って使っているときは何も起こらない。

 座ってパソコンに向かっているちょうど頭の後ろ当たりから、視線を感じるようになってきた。わずかにディスプレイに背の低い影のようなものが映りこむこともあったが、すぐに消える。チリチリと針の先でつつかれるような視線が嫌になり、立ちながら仕事することが多くなった。

 ただ、疲れてくると座ってしまう。傷がさらに増えてはっきりと文字をなすようになり『オ…マ…エ…ノ』と読めるようになった。

 先の文字を見たい気がするが、恐ろしくてできない。買い換えるお金ができるまで、むくんだ足で今日も立ちながら仕事をしている。

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