明日太陽が昇らないかを賭ける。
巷にはやる疫病の影響で、勤めていた居酒屋がつぶれてしまった。もともと宵越しの金を持たない質だったので、貯金もない。夜勤で給料もよく一時期は店長になれるくらいまでだったので、お金の心配はせず、女遊びや、ギャンブルに使いまくっていた。その居酒屋は手取りの給料はよかったが、社会保険などをごまかしていて、雇用保険もかけていなかった。そういう意味でいつつぶれてもおかしくなかったが、給料がいいので気にしていなかった。
店がつぶれてしまうと、たちまち金が立ちいかなくなり、住んでいたアパートは追い出される瀬戸際だった。
友人からもまともなところからも金を借りることができず、ついつい、やばい街金、闇金からお金を借りてしまい、さらに追い立てがきつくなった。
昔の借金取りは悪口やら脅し文句を平然と使ってきたようだが、最近はそんな感じでもない。ひどいことはされないだろう。との考えは甘かった。
拉致され、連れてこられたのは使っていないような倉庫の中だった。照明が薄暗く中を照らしている。
初老の男がこちらの顔をのぞき込むとにやりとわらった。
恐怖で体が震える。彼らはどうみても法を守るような人種に見えない。数人の男が回りを囲んでいる。
「働いている居酒屋がつぶれて借金したんだっけ? 兄さんも災難だったねぇ。一つ賭けをしないか? 明日太陽が昇らないかどうか?」
「昇らないんだろう?」
「正解だ」
後頭部を鈍器で殴られた。薄れていく意識の中、男がいう意味をはっきり理解していた。臓器を売り払うとかなんとか、そんな話が遠くから聞こえてくる。
明日は自分は土の中、まさに太陽は昇らないのだろう。
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