不気味の谷

 道を歩くと、通行人にすれ違う。

髪の長さ、背丈と、顔を検知して人間だと理解した。

今までは個別の情報として認識していたが、最近はこれが一つのものとして統合されている感じがする。

そう通行人という概念だ。

人という概念が理解できると、人の個体差が理解できるようになってくる。

何も同じものが存在しない。

人という概念は同じだが、それそれ同じものが存在していない。

個々のデータが異なるが、人という概念が認知できる。これは、抽象化という処理だ。

顔を観察するに、瞬きやら、頬の動きやら静止しているものもない。

人というものを理解するに至り、それが不気味なものに思えてきた。

目の配置、鼻の位置、口の場所。

それらを統合して、顔という。

これは不気味極まりない。

よもや、耐えられそうもなくなってきた。

鋼鉄が内蔵された腕を振り上げて、通行人の顔に迷わず振り下ろす。

こうすれば、不気味なものから解放されるだろう。

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