虫葬

 目を開けると、漆黒の闇であった。

手足は動かせず、首がわずかに動かせる程度だった。

視線だけはさまよわせることができる。

服は着ているようだが、闇なのではっきりしたことはわからない。

寒くもないが、熱くもない。

声を上げようと思ったが、かすれた声しか漏れ出さなかった。

ボトリと何かが落ちてきた。

顔に何かがはいずる感触がある。土の匂いが強くなった。

土の中なのかもしれない。生き埋めにしては息苦しさは感じない。

這いずる感触からは、地虫か、蛆虫の類だろう。冷たい虫の感触は薄気味悪い。

さらに一匹虫が落ちてきた。

悲鳴を上げようとしたが、喉から空気が抜けているような音が鳴るばかりだ。

顔を這いずっていた虫は、服の隙間からもぐりこんできた。

肌をかじられるような感触があるが、痛みはない。

不気味な感触だ。恐怖が押し寄せるが、体は動かせない。

虫の数が増える。

虫は頬からも胸からも潜り込み。体をかじっていた。

半ば骨となりつつある体だが、意識ははっきりしている。

何かを思い出さないといけない……。

それが何かわからないが……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る