お金を手に入れる方法
会社が不況で倒産してしまい、すでに半年くらいたってしまった。
たくわえもつき、アパートの家賃も来月払えるかわからない。
消費者金融で借りてしまった金の返済も迫ってきていた。
必要な金額を調べると百万円位になる。
一発逆転を考えて、情報商材を買うことにした。
夜中にネットを調べると、お金が儲かるという情報がいくらでも手に入る。
詐欺かもしれないが、そんなことを考えている余裕もない。
できるだけ、短く、簡単に大金を稼げる方法を調べると、
奇妙な情報を見つけた。
買った人間の体験談やら、煽りの文章はパターン通りだが、
誰も気づかなかった方法でお金が手に入るらしい。
値段は五千円だが、もし儲からなかったら返金は可能という話だ。
手持ちはぎりぎり五千円くらいある。
もし、効果がない場合は返金してもらうことにした。
販売終了を示す時間がカウントダウンで減っていくなか、焦りながら購入のボタンを押す。
代金を支払うと、メールで音声ファイルが届いた。
情報商材は、この音声らしい。
音声を聞いてみた。
どうやら、販売した人物が百万円を手に入れた方法らしい。
夕方の十九時くらいに、近くの公園で百週走る。
すると、百万円が手に入ったということだ。
全く意味が分からない。
近くには確かに公園があり、百週走ることはできる。
ばかばかしいと思ったが、もし手に入らないと返金してもらえばいいと思い実施することにした。
運動を記録するアプリを導入し、確実に走ったことをわかるようにした。
返金ができないとこれを証拠にするつもりだ。
ジャージに着替えて、公園に向かう。
運動不足がたたって、一周走るだけで、心臓は激しく脈打ち、息切れが激しい。
ふらつきながら、走り続けた。
踏み固められた土が足に響いてくる。
太ももが痛くなってきた。
もはや、夜になりつつある。公園には人はいない。
躓きそうになりながらも歩くも同然な速度で走り続けた。
荒い息の音が響く。胸が痛くなった。
急に多幸感が襲ってきた。エンドルフィンが分泌されているかもしれない。
札束をつかむように、虚空に手を伸ばす。
まとわりつくのは、夜の大気だ。
汗が額から零れ落ち、足の筋肉が悲鳴をあげる。
今までこんな努力をしたことがあるだろうか?
後、一周。
最後の一周だ。
足が震える。
遠くから烏の鳴き声が聞こえた。
百週を達成した。
足がふらつく。小石に躓いて顔を地面にしたたか打ち付けた。
広げた手は何かをつかむ。
笑い続ける膝で立ち上がると、手を開いた。
そこには犬のふんがあった。
家に帰りすぐに返金しようとしたが、その情報を売っているサイトはすでに消えており、消息は不明だった。
メールを送っても返信はまったくない。
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