バイクを盗んで走り出す。

 会うたびに昔は悪だったという話をする奴がいる。

高校時代から付き合いのある友人の一人だが、いい歳になっても人は本質変わらないのだろう。

昔の武勇伝ばかり聞かされるので、飽きてしまった。

そんな中、そいつのいう話で奇妙なものがある。

いまだ、バイクの免許をとれる歳になる前に、バイクを盗んだ話だ。

そいつの言うには、バイクを盗んで走り出したらしい。

まるで意味が分からない。

バイクを盗んで走り出したら、バイクは置きっぱなしで盗んだうちに入らない。

聞き返すのも面倒なので、毎回聞き流しているが、ある日謎が解けた。


 それは、とめていた自分のバイクで帰ろうとするときだ。

ふと、バイクを肩に担いでみた。今までそうしているように自然な動きだ。

排気量は400CCを超えるバイクの重みが肩にかかる。

足が一人で動き走り出す。

風を切る。道路を突っ切っていった。

あれ、バイクはこんな風に運転したのだろうか?

周りのバイクも人が担いで走っている。

何か、おかしいと思う自分が変なのだろう。


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