ちょっと奇妙な話集

裏がある占い師

　よく当たる占い師の噂を聞いて、わざわざ休日をつぶしてまで占ってもらいに赴いた。

なんでも、占いは座って顔を見ただけで、１００％の確率で当たるらしい。

大阪の市内、とあるホテルの一室でその占い師は定期的に占いを行っているようだ。

ホテルのロビーについたのは昼間の二時の十分ほど前で、案内表示板にはその占いについて行われる階、部屋が表示されている。

エレベータにのり、案内に表示されているフロアに上がる。

廊下をあるき、目当ての部屋の前につくと、案内らしい中年の女性が愛想よく話しかけてきた。

名前を告げて、高い代金を払うと、部屋に通された。

ホテルの一室で椅子に座ると、二人の男女が机の正面に座る。

男女ともに、五十代くらいに見える。

この占い師は二人組らしい。

柔和な笑みを浮かべている占い師たち。

何も言わずに黙っていると、大変でしたねと女の方がそう言った。

何が大変かはわからない。

コールドリーディングを狙っている典型的なパターンだ。

男の方は、顔の相がどうしたとか、誰にも当てはまるようなことを言ってくる。

バーナム効果をねらっているのだろう。

さらに、黙っていると二人の挙動が怪しくなってきた。

こちらも笑顔を浮かべている。

明らかに戸惑っている二人組をみながら、すべてに安心して暮らしたいんですよ。

とぼつりとつぶやいた。これは本当の悩みではないダミーだ。これくらいは簡単に見破ってもらわないと困る。

彼らは、それはどういうことかと聞いてくる。

それを占うのがお前らの仕事だろうと思ったが黙っている。

黙っていると挙動が明らかにおかしくなってきた。

女の方が、あなたに不幸が訪れますといってきた。

なので、具体的にどんなことと聞くと、それは突発的な死に直面するとかいってくる。

笑いをこらえる。

それは、いつ起こるのですか？と聞くと、二人同時に焦ったように死ぬのがこわくないのかと聞いてきた。

黙っていると、こちらの占いを信じていないようですね。と男の方がいう。

救いをもたらされるには100万のセミナーがとかいいだしたので、そろそろ帰ろうとおもい席をたつ。

典型的な詐欺だった。本物かと思ったががっかりした。

誤解されては困るが、別に嫌がらせに来たわけではない。何を悩んでいいか悩んでいるので、それを解消してほしいのだ。なので、自分でも悩みを明示することができないで困っている。座ってみただけで分かるのなら解決できると期待したというわけだ。

椅子から立ち上がると、二人に背を向けてさっさと外にでる。

背中に後悔するとかなんとか、叫んでいるが無視だ。

それから数日後、朝出社するときに電車が迫ったホームに突き落とされた。

一瞬、振り向くと突き落とした相手が見える。例の占い師の男の方だった。

なるほど、確かに１００％当たるはずだ。

警笛がなり響く中、初めてあの占い師たちに感心した。