お部屋

 ふと気が付くと、薄汚れた部屋の真ん中に突っ立っていた。

四畳くらいの和室には、万年床が敷き詰められ、その周りにカップ麺の空カップ、食べかけの弁当、ペットボトル、薬の袋が散乱している。

言い知れない腐臭が立ち込め、黒い蠅が渦を巻いて部屋を飛び回っていた。

弁当から、万年床から蠅は立ち上っている。

何かやるべきことがあった気がする。

頭がぼんやりして思い出せない。

部屋を見渡すと、カーテンが閉め切られた窓のそばに机があり、電源が入りっぱなしのパソコンがあった。ディスプレイは画面を表示したままだった。

電気はまだ切られていないようで、天井からぶら下がっている電球が薄く部屋を照らしている。

蠅が飛び回り、腐臭は耐え難いはずだが、不思議と気にならない。

やるべきことは何か、アカウントを持つSNSに書き込みを行った。

自分の死体が腐る前にこの部屋に特殊清掃を呼んでほしいという依頼だ。

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