首落ち地蔵

 とある山道にぽつりと設置されている地蔵は、なぜか補修しても首が落ちてしまうという。

そんな話を聞きつけて、さびれた山道まで来た。

単純な好奇心というのもあるし、自分が属している怪談好きのコミュニティのネタにしようと思ったこともある。

険しい山道をあるき、山頂近くまで登ると、その地蔵があった。

鬱蒼な木々が生い茂る中、汗をかきながら登ってきたはいいが、地蔵自体は新しく、首がとれたという感じでもない。

怖い話好きの友人に聞かせてもがっかりするだろうと思い、写真だけとって帰ろうとした。

日はもう落ちかけて、薄暗くなりつつある。

これくらいで引き返す必要があるだろう。

そう思ったとき、突然生臭い風が吹いた。

獣のようなにおいがして、顔をしかめる。

さらに突風が吹き、体がよろめく。

ゴトリ

地蔵の首が落ちた。

首に鋭い痛みが走る。手を当てると血がにじんでいた。

地蔵の首が転がり、不自然に地面の上に載ると、こちらにいやらしい笑みを浮かべた。


 気が付くと、地蔵の首はそのままで地面に転がってもいなかった。

しかし、首から血がにじんだままだった。

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