二章
トイレでかみが……
仕事帰りにいつも通り過ぎる公園がある。
学生がたまに集まって野球ができる程度の広さがあり、入口には石畳があり、ぽつぽつと木々が生えている。
いつもは自転車で通り過ぎるだけだが、今日は事情が異なった。
突然の腹痛があり、公園の隅にある薄汚れたトイレに入り込んだ。
個室は一つだけ空いていて、他は閉まっていた。
空いている個室に入り、鍵を閉めた。
個室は天井にちょうど、腕が通るくらいの隙間がある。
隣の個室にはわずかに人の気配がした。
洋式の便器に慌てて座ると、一息ついた。
隣から、切羽詰まったような声で、『かみを……』という声がした。
予備の紙がトイレには設置されている。
どうやら、隣は紙ぎれだったらしい。これは運が悪い。
天井の隙間から、トイレットペーパーを投げ込んだ。
すると、天井と壁の隙間から、青白い手が伸びてきて、髪をつかんだ。
青白く死人のように血色の悪い腕は、人ではあり得ない長さだった。
髪が引っ張られて痛みを感じる。思ったより握る力は強い。
声は「この髪だ」と男女のいずれとも取れない声で叫んだ。
そこで、冷静に謝ると、手は何もなかったように消え去る。
狐につままれたようだ。
用をすませて個室をでると、隣の扉は開け放たれていて、投げ込んだトイレットペーパーが一つ転がっていた。
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