知り合いの占い師の話

 知り合いに占い師がいる。

手相やら、四柱推命とか、色々な占いをして生計を立ているらしい。

年ははっきり聞いていないが、六十歳は超えているだろう。

ある日、家に遊びに来た時に占いを生業にしているなら、霊を信じるのかと聞いてみた。

信じないという答えが返ってきて、そんなものかと思っていると、ふと思い出したようにこんな話をしてきた。


霊を信じないので、墓とかは物質にすぎないと割り切っている。

よく墓場で墓石を抱いて寝たこともあるという。

そんな中で、不可思議な話をしたとのことだ。

それは、とある霊山の帰りの話だ。

そこは、有名な落ち武者やら、戦国時代の有名人の墓がある山で、木々が生い茂り昼間でも陰鬱な雰囲気だったらしい。

すっかり日が落ちてしまった。

眠くなったので、苔むした自分の背くらいもあるだろう、小難しい名前が書かれた墓石に頭を置いて、眠ることにした。

年月を閲した墓石に刻まれた名は、すでに読めなくなっていた。

うとうとしていると夜になり、時間はわからないが、今までうるさかった葉がこすれる音や、鳥の鳴き声が急に消え、無音となった。

ざくざくと、地面を踏み鳴らす音や、明らかに甲冑の音がした。

ぼんやりした頭で、これは尋常でないとわかった。

人の気配は数人、いや数十人くらい。

自分の近くにゆっくりと集まってきているのがわかる。

目を開けてはいけないと本能的に思い、目を閉じ息を殺していると、数歩近くまで甲冑の音が近づいてきた。

だまって、息を殺していると、なぜか、気配は近づいては来ず、眠くなったので眠ってしまった。

鳥のさえずりが聞こえて朝になり、山を下りたとのことだ。


霊は結局いるのかな?と尋ねたら、占い師は首を振り信じていないが、もしかしたらいるのかもなぁと答えた。

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