障子に目あり

母の実家は古い平屋であり、客間の障子をあけると縁側という場所もある。

長くマンションに住んでいると、そんな縁側も懐かしい。

しばらくぶりに実家に帰ると、前に会ったときより老いた母が出迎えてくれた。父は数年前に亡くなっている。

よく帰ってきてくれたと、歓待の言葉をかけられて、客間に通された。

荷物を置くと、ふと障子に破れがあるのが見えた。

指で外からついて、穴をあけたかのように思える。

話が盛り上がり、すでに夜になっていた。

入浴と夕食を終え、客間で眠ることにした。

畳に敷かれた布団に横になると、視線が自然に障子の穴に向いた。

なぜか眠れず、まどろんでいると、穴から覗く目が見えた。

目は血走っているのか赤く見える。

「誰だ!」

母は別の部屋で眠っている。縁側には誰かいるとしたら、それは不審者だ。

思い切り障子を開ける。

そこには誰もいない。

母が騒ぎで起きてきた。

覗く目の話をすると、訝しい表情を浮かべる。

なんでもその障子の破れは、直しても同じ場所がいつも破れるらしい。

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