化け物に追われて……。

閉じ込められてどれくらいになるのだろう。

ここはどうやら古びた城であることはわかる。

外に出る方法はわからないが、城の中は自由にうろつくことができる。

腹が減ったら、適当に食事をとり、気が向いたら自分の部屋に帰って眠るという日常だ。

退屈ではあったが、特に不自由なわけではない。

問題は化け物が出てくるくらいだ。何度か遭遇したことがあり恐怖のあまり、逃げ帰ったこともある。

何とか外に出ようとしたが、どこにも出口は見つからない。

昼間は、化け物に遭遇しないように注意して、城中を探す。

記憶を思い出そうとすると、頭に霧がかかったように思考がまとまらない。

広い廊下を進み、中庭にでた。

月の灯りが、中庭に設置された泉を照らす。

化け物があらわれた。

泉に写った姿を見る。

髪の毛を振り乱し、鋭い牙、ボロボロの服。

悲鳴を上げて、逃げ出した。

どこを走ったかわからない。

心臓の限界まで走った。

前は閉ざされていた大扉が開いていた。

これで怪物から逃げられる。

扉をくぐると、まばゆい光に包まれた。


目を開けるとそこは白い部屋だった。。

妻と名乗った女が泣きながら、意識が戻らないかもと心配したと言ってきた。

娘と名乗る女もいた。

どうやら、ここは病院という場所らしい。

「やっとあの城から逃げられた」

思わずつぶやいたが、声は誰にも聞こえなかったようだ。


まずは、この女を餌食にしよう。

そう思うと、化け物はにやりとわらった。


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