抜けられないトンネル

バイクを飛ばしていると、目の前にトンネルが近づいてきた。

山にぽっかり空いた黒い穴にすいこまれそうになる。

バイクで疾走していると、色々なことを忘れることができる。

何かから逃げるようにスロットルを開ける。

何かもを置き去りにするような風を感じた。

トンネルの中には灯りが等間隔でならび、導かれるような雰囲気を醸し出している。

吸い込まれるような黒い穴に吸い込まれていった。

いきなり、ヘッドライトの灯りが目を焼いた。

目の前にトラックがあらわれたのだ。

何かがおかしい。このトンネルは一方通行で、車とぶつかること自体があり得ない。

バイクはトラックに跳ね飛ばされて宙を舞い、恐怖に引きつるトラックの運転手と目があった。

運転手が顔をしかめ、恐怖で震えた。

青ざめた唇が動く。

「ゆ、幽霊だぁあ」

年配の運転手は叫び声をあげた。


思い出した。自分は何度も車にこうやって跳ね飛ばされている。

最初はいつだったか、もうとっくにわすれてしまっている。

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