命の残照

 目が、覚めた。目の前には大空が広がる。川のせせらぎが聞こえて心地良い。どうやら私は、河川敷で横になっているようだ。けれど、私は殺されたはずじゃ…?

 不思議に思いながら体を起こす。体の感覚に違和感を覚えながらも、ふと自分の顔を見ようと水面を覗き込んだ時、戦慄した。自分の姿が、写っていない…

 不自然な点は他にもあった。河川敷の石の上に座っているのに、石の間隔が全くない。石に手を伸ばすが、透けてしまって触れない。これって…


「幽霊になっちゃってる…!?」


 私ははっとして、周囲を隈なく見渡す。もしかしたら、お父さんとお母さんも幽霊になっているんじゃ…そう思い周囲を走り回るが、一向に見つかる気配はない。声を出して呼んでみたり、叫んでみたりもしたが、効果はなかった。


「ど、どうしよう…」


 確かに死ぬ直前、復讐を心に誓ったものの、どうすれば良いのかわからない。そもそもこの幽霊の状態で、復讐ができるのだろうか…

 私はあてもなく、ふらふらと歩き始めた。ここで気づいたことが、いくら動いても全く疲れないこと。おかげで移動には困らなさそう。時間はかかるけれど。

 気づいたことは他にもある。想像通りではあるけど、私の存在は、周りの生きている人たちには全く認識されていない。触ろうとしても透けてしまうし、声を出しても聞こえてない様子。

 いよいよ困った。私の存在は消滅こそしなかったけれど、これでは何もできず、存在しないのと同じだ。王国に復讐はおろか、通行人にいたずらの一つもできない。


「幽霊になったんだから、憑依したり呪い殺したりとかできると思うんだけど…」


 思わずそうつぶやいた。もしかして、できる幽霊とできない幽霊がいるのかな…もし自分ができない幽霊だったら、このまま永久にここをさまようことになるんだろうか…

 そんなことを考えながら歩いていると、人だかりが目に入った。何か掲示されているらしい。薄々内容は想像できるが、私も掲示の内容を見た。

 思った通り、私たちのことだった。王国反逆者を処刑したと。目を背けたかったが、この悔しさと憎しみを忘れないために、その内容を噛み締めながら目に焼き付け、その場を後にした。

 しかし、考えても考えても復讐の方法が浮かばない。人間の身ならともかく、今の自分は全く周りに干渉できない…

 途方に暮れていたその時、私の脳裏に一人の人物が浮かんだ。あの人なら、力になってくれるかもしれない…

 私は急足でその人のところへ向かった。

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