第2話 風呂上り

 今日の帰りは遅くなったが、明日は休日で、多少の夜更かしは問題なかった。ぼくは自分の入浴の前にリンデの手入れをしてあげることにした。ぼくとリンデにとって、月に二回ほどの恒例行事だ。


 ぼくはリンデのセーターを脱がし、シャツと下着も外した。着替えは事前に用意してあり、これらは明日の朝一番で洗って干しておこう。ぼくは脱がせた衣服を綺麗にたたみ、テーブルの隅に重ねておいた。


 恥ずかしい。


 一糸まとわない生まれたままの姿にされたリンデは頬を赤らめ、上気した顔でぼくを見つめた。若干非難しているようでいて、茶目っ気も感じられる。いつものこととはいえ、恥じらいを失わないリンデの少女性を、ぼくは尊重し、なるべく直視はしないようにしてあげた。


 ありがとう。でも、気にしないで。


 リンデは途端に素直になる。ぼくに心も体も洗われるのを喜んでいるのがリンデの本心であり、それはぼくも承知していた。


 ぼくはリンデの心を深く愛していたけど、その整った美しい身体も同等に、かけがえのないこの世の至宝として愛し、尊いと思っていた。だから、今度はリンデの艶めかしいけれど、ドキドキするだけでいやらしさなどは微塵も感じさせない美麗なボディラインを眼福として受け止めながら、より綺麗にしてあげていった。


 リンデのためのボディーソープをしみ込ませた清潔なスポンジで、滑らかで弾力のある肌を傷つけないように、丹念にお手入れを続ける。やはりリンデは恥ずかしいらしく、感謝を伝えながらも、その視線はどうにも落ち着かない様子。


 リンデのお手入れが完了し、裸のリンデに、新しい衣装を着せてあげた。リンデはとても気に入ってくれたらしく、ぼくも嬉しくなった。


 今度はぼくが入浴する番。帰宅してからまた短い別れになるが、リンデは待っていてくれる。ぼくは早く仕度を整えて、さらに見違えたリンデと一緒に過ごしたかったが、ぼく自身、汚れをそぎ落とさねばならない。だから、今日はいつも以上に丁寧に身体を洗った。


 風呂から上がったぼくは火照った身体を拭き、寝間着に着替えてから歯を磨く。それから、ずっと待ちかねている様子のリンデの視線を背中に感じながら、煎餅布団を床に敷いた。


 ぼくは振り返った。リンデは大人しく椅子に座ったまま、ぼくのことを待ってくれていた。新しい冬物の紺色のブラウスを身につけたリンデ――。


 ぼくはそっと彼女を抱きしめ、彼女がせがんでいる口づけをしてあげた。しばし、唇を合わせたままじっとしていたが、やがて、ゆっくりと語りかける。


「リンデ、おやすみ」


 ええ、おやすみ。


 ぼくは部屋の明かりを消し、布団に入る。今日は疲れていたので、眠りに落ちるのに、時間はかからなかった。

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