婚約披露

 それから一週間ほどしてジェインはアーノルド家にて主要な貴族全員を招いて盛大なパーティーを開催した。


 折しもジェインとレオン、そして私とアーシャの婚約騒動はじわじわと他の貴族たちにも知られていったころなので皆事態がどうなっているのか気になっていた。しかし父上がきちんと発表しなかったことや、レオンが好き勝手なことを言いふらしていることもあって情報は錯綜していた。


 発端はしょうもないアーシャの我がままとはいえ、レオンのオーランド家、ジェインのアーノルド家はどちらも大きな家である。もしここで両家の関係が悪化すれば王国全体に影響が出るかもしれない。


 そんな危惧を抱いた貴族たちは次々と集まってくる。そのため、パーティーは期せずして盛況となった。

 広間に集まった貴族たちを見てジェインは満足そうに頷いた。


「これだけの貴族たちが証言してくれるのであれば、このパーティーさえ乗り切れば僕たちの関係は安泰だろうな」

「はい。これだけの方をすぐに集めるなんて、ジェイン様はさすがです」

「はは、家の力やお金とはこういう時に使うものだからね」


 自分の我がままにしか使わないマリーやオードリーにも聞かせてあげたい言葉だ。


「しかしレオン様は何かしてくると思いますか?」

「だろうね。ああいう男は人一倍プライドが高い。しかもここで逆転すればそれは大勢の貴族に見られることになる。僕にとって決着をつけるチャンスではあるが、それは向こうにとっても同じだ」

「なるほど」


 言われてみればそれはその通りだ。


「さて、そろそろ行こうか」


 そう言ってジェインは私の手を引いて広間に入っていく。私たちが一緒に歩いているのを見て貴族たちはおお、というざわめきをあげる。

 大勢の人に見られるのは少し恥ずかしい。


 広間の前まで歩いて来ると、ジェインの元に一人の老人が現れた。

 我が国の宰相のノーガン様だ。


「今日は私が開いたパーティーにお越しいただき皆様ありがとうございます。さて、早速ですが今回は皆様を騒がせている私の婚約者の件について改めて発表させていただこうと思ってお呼びいたしました」


 おお、と会場がざわめく。


「色々と込み入った経緯はありますが、現在こちらのエーファ・クレセントとジェイン・アーノルドは法的に婚約しているという事実に間違いはありません。ですよね?」


 そう言ってジェインはノーガンに尋ねる。このためにジェインはノーガンを王宮から招いていたらしい。相変わらず彼の手腕は鮮やかだ。

 するとノーガンは老齢にも関わらずよく通る声で言った。


「その通りだ。エーファ・クレセントとジェイン・アーノルドの婚約は国として正式に認めている」


 その時だった。


「その婚約、異議あり!」


 そんな声とともに私たちの前に一人の男が現れた。レオンだ。

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