番外編

出会い

「そなたは……」


 私を見て絶句する魔法使いの老人。彼は杖を振り、繭状の牢獄を破壊する。液体が勢いよく吹き出し、私はそのまま流れ出た。私は液体を吐き出し、落ち着いて、久しぶりの空気を吸って、吐いてを繰り返し、目の前の老人を見る。


「どうして私を助けたの」


 ギロリと老人を睨みつける。


「助けて欲しそうに見えたからじゃよ」

「……そう」

「儂はルオー。魔法使いだ。……そなたは」

「言わなくていい。想像通りだよ」


 その先の言葉は聞きたくなくて、被せるように私は言った。

 もうたくさんだった、弄られるのも、痛みつけられるのも、そうやって利用されることも。

 哀れみの視線をルオーは私に向け、口を開く。


「そなた、儂の家に来るか? 」


 突拍子のない言葉に私は目を丸くした。


「何言ってるの? 私は普通の人間じゃあない。普通に生活出来るわけない」


 だからこうやってここにいたんだろうが。


「そなたを縛っていた研究者たちはもういない。自由の身になったわけじゃが、普通の社会では生きてはいけない。だから、死のうとしたんじゃろう? 」


 確かにその通りだった。核心を着く言葉に詰まる。


「その点儂なら平気じゃ。何せ人より力がある魔法使いなのでな。十二人の弟子たちにも良い影響を与えると踏んでいる。どうじゃ? ただならぬ少女よ、儂とともに来ないか? 」


 人なんか信じられないと思っていたのに、ルオーの言葉は信じられる気がした。

 私は差し伸べられたしわしわの手を取った。




 暗闇の中、森の中を進んでいく。真っ黒な森は不気味だったが、ルオーが手を繋いでいてくれたから怯えずに済んだ。

 少し歩いていくと、ルオーがもう少しだぞ、と言った。そうして立ち止まった場所には何も無かったが、ルオーが呪文を唱えた途端、突如、建物が現れた。見た目は貧相で、どこへ連れてかれるのか不安を覚えた。少し震える小さい手に、ルオーは、大丈夫だよ、と言って建物に入ったのだった。


「ただいま」

「おかえりなさいませ、ルオー様」


 扉を開けると不思議なことに、建物の様相とは想像もつかないくらい煌びやかに輝く豪華な内装だった。出迎えてくれた金色の髪を持つ美しい女性は、私を見るとルオーに問いかけた。


「ルオー様、この子は? 」

「拾ったのじゃよ」


 そうじゃろ? と優しく私に聞く。私は頷く。金髪の女性はまたか、と言った感じだった。


「ルオー様、人助けは良いことですが、拾い続けると、自分が痛い目を見ますよ? もう十三人目になるんですから」


 ルオーはにこりとして言う。


「もう拾わない、ササラ。この子が最後じゃ」

「いつもそう言うではありませんか。約束してください」

「制約魔法でもかけても構わない。この子はきっと今までで一番手がかかると思うからの」


 言葉の意味を女性は理解が出来なくて、首を傾げる。


「ともかく、一旦食事にしましょう」


 そう言って、女性は建物へ案内してくれた。

 それが、私と彼らとの出会い。


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十三番目の弟子 野坏三夜 @NoneOfMyLife007878

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