第5話 召喚
俺は早速固有スキル『眷属召喚【聖蛇】』を使用する前に、部屋に魔法をかけておく。
「〝
魔法は第一〜第十階梯に分けられ、今俺が使った魔法〝
効果は、一定範囲内の音を外に聞こえにくくする事だ。
しかし、今回は『全属性魔法LV:1』の状態で、魔力にモノを言わせ無理矢理発動したので精度は低い。それでも、使わないよりはマシだろう。
この世界ルーファスの一般的な魔導師は、第五階梯の魔法が使えるようになれば優秀である、と言われている。
事実、魔法が得意な魔人族でさえ第六階梯の魔法が使えれば優秀だと言われているのだ。
魔法の発動を確認した俺は早速『眷属召喚【聖蛇】』を使用する。
すると、足下に少し小さめの魔法陣が現れ、そこから綺麗な白蛇が現れた。
大きさは思ったよりも小さいが、スベスベとした白い肌と赤い双眼が何とも可愛らしい。
足下から俺の顔をかくにんした白蛇は、俺に向かって小さな頭を下げる。
「初めまして、主。私は、医神アスレティア様に使えし聖獣、メデューサ・デル・カーリス・シールバーと申します。周りの聖蛇様方からは、メデルと呼ばれております」
白蛇が喋った事は、聖蛇だからと直ぐに納得したが、名前がメデューサ、ね。
確か、ギリシャ神話に登場するアスクレピオスはメデューサの血を使い、死者すら蘇らせたって話しがあるな。
そんな事を思いながらメデルを見つめていると、
「申し訳ありません!」
急に謝り出した。
「何に謝ってるんだ?」
「はい。見た通り、私は聖蛇の中でも特に幼く、対した力も持っていません」
なるほど。聖蛇が小さいんじゃなくて、メデルがまだ子供なのか。というか、俺は他の聖蛇を知らんのだが。
「つまり、お前は下っ端な訳か」
「はい。先日アスレティア様から聖蛇全員に、『近々、皆の中からねー、下界に召喚される子が出るよー!』と言われました。アスレティア様は、それはとても誇らしい事だから、と嬉しそうに私たちに話してくれました。
でも、聖蛇の中で最も未熟だと自負している私が、召喚されるなど夢にも思っておりませんでした……ぅぅ」
顔が蛇で表情は分からないが、声が泣きそうである。
「んじゃ何か?俺は他の聖蛇を呼べば良いのか?」
「いいえ。この『眷属召喚【聖蛇】』のスキルは1番初めに召喚した聖蛇と契約をしなければならない様です。そして、他の聖蛇を召喚する場合は……その」
あぁ、だいたいメデルの言いたい事が分かった。
「お前より弱い聖蛇しか召喚出来ないんだろ?」
「ご明察の通りです」
これは予想外だ。
確かに、スキルの熟練度が低いとスキルの詳細が全て表示されないのはたまにある話だが、うっかり忘れていた。これでは、他の聖蛇を呼ぶ事は出来ず、実質俺の眷属はメデルだけどなる。
メデルは見上げていた頭を床に垂らし、落ち込んでいる。
いや、小声で「アスレティア様、お母様、お父様、お兄様、お姉様、お爺様、お婆様、おじ様、その他大勢の皆様方、誠に申し訳ありません!この恥晒しのメデルにどうか罰を!!」とブツブツ言っている。
汚職した政治家の謝罪会見?それとも、一種の狂信者?
まぁ、どっちでも良いや。
「自己嫌悪の所悪いんだけどさ、時間が勿体無い。早くその契約とやらをしてくれないか?」
「……はい。その、右手を出して下さい」
俺は言われた通り、メデルの前に手を出す。
「少し痛いですが、直ぐに終わりますので」
そう言うなり、メデルは俺の右人差し指に噛み付いた。
「っ!」
すると、メデルの体が一瞬赤く光り、牙を抜く。
噛み付かれた後は、『
「契約はこれで成立です。今より私は主様の僕です。私を思い浮かべ、ステータスの念じ下さい」
俺はメデルの言う通りステータスと念じた。
すると、目の前にメデルのステータスが表示された。
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名前:メデューサ・デル・カーリス・シールバー
種族: 聖獣
固有スキル
『聖蛇の脱皮』
耐性スキル
神聖属性無効
魅了無効化
光属性吸収
スキル
光魔法LV:3
隠遁LV:5
称号
『聖獣』『勇者の眷属』
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効果の確認ををする。
=========
『聖蛇の脱皮』
効果
・状態異常に陥った際、直ぐに治癒する。
・隷属、支配、呪いの治癒は出来無い。
・ダメージも少し回復する。
・聖蛇の固有スキルである。
神聖属性無効
効果
・神聖属性の魔法、スキルを無効化する。
光属性吸収
効果
・光属性の魔法、スキルを吸収する。
光魔法
効果
・光属性の魔法が使用出来る。
隠遁
効果
・他人から姿を隠す事が出来る。
・見破るには、隠遁以上のレベルの看破などのスキルが必要である。
『聖獣』
効果
・魔に傾いた存在に対して攻撃力倍加。
・魅了を無効化する。
・スキルの熟練度が上昇しやすい。
・成長補正。
『勇者の眷属』
効果
・支配、隷属効果を受け難くなる。
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全てのスキルと称号に目を通したが、メデルは決して弱くはない。
寧ろ、自分を過小評価し過ぎているように感じる。
何よりメデルはまだ幼い。だったら、現時点で周りより弱くても、いずれは他の大人の聖蛇たちと同じくらいには強くなれる筈だ。
「メデル、お前は自分で思うほど弱くないと思うんだが……」
これは同情でも何でも無い、客観的に見て思った事だ。
「……ありがとうございます、主」
しかし、他人である俺がいくら声をかけても結局は本人次第である。
「私はまず、アスレティア様と他の聖蛇様方に報告する事が御座いますので、失礼致します」
メデルは出現した魔法陣の光に消えた。
俺はそれを見送った後、ベッドに横になった。
今は他の事を考えるよりも、今までの事を整理したかった。
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