5日目:掴んだ真実

 目を覚ます。見慣れた天井、変わらぬ風景、カーテンの隙間から挿す陽光、響き渡るアラーム。そこまで認識した私は昨日と同じ行動を取る。


「ママ……ごめん。なんかあんまり体調良くないみたいなの。学校お休みしたいんだけど」


「大丈夫?あら、顔色悪いわね。無理しちゃダメだし、学校にはママが連絡しておくわ。布団で寝てなさい」


 部屋に戻って昨日掴んだ気づきを整理する。うん、昨日心音ともう1人の私がくれたヒントを元に私はこれを終わらせるための鍵がなんなのか、その問いに一つの答えを導くことができた。そうと決まれば後やることは時間が来ることを待つだけ。下手に部屋を出て行動が変わると面倒だ、私はもう一度睡眠を貪ることにした。


 疲れていたのだろうか目が覚めた時にはもう学校が終わる頃だった。私は一応着替え、流石にお腹が空いたのでキッチンにあったクロワッサンを2つほど頬張ってまた部屋へと篭る。


 昨日見つけたノートを読み返して考えが間違っていないか何度も確認すると昨日と同じく2人が来た。私はもう動じない。私がやることを確実にこなす。


 コンコンコン


「ナタリー?お友達が来てくれたわよ」


 そう言ってママがドアを開ける。その後ろには心音と恭香がいるのが見えた。


「おーナタリー。体調大丈夫か?」


「ごめんね〜ナタリー急に来ちゃって」


 私は、彼女たちが話しかけている私の方を向いて口を開く。


「あなたが、全ての間違い……!もう1人の存在するはずがない私!」


「ウフッ……ウフフ……正解。でもね、ここじゃダメ……もう時間も無いよ。全ては始まりの場所から始まったから次はそこで会おう?」


「何を言ってるの!?始まりの場所!?あなたがこの全ての間違い。あなたが始めたんでしょう!?」


「だから、正解って言ってるよ?」


 ずっと自分の顔じゃ無いような掴みどころの無い笑みを浮かべながら答えをはぐらかすもう1人の私。とても焦ったい。その顔に張り付いた笑顔を剥がしたい、そんな衝動に駆られそうになるような顔。


「今日はもう時間が無いの。気づいたのはいいけど会う方法がよくなかったね。私はずっとあなたのそばにいたのに」


 ずっと訳のわからないことを言っている彼女に詰め寄って真実を問おうとする。


「いいから早くこの悪趣味な夢を終わらせて!」


 もう1人の私の肩を掴もうとした時、それは一歩後ろに下がる。


「ダメダメ。私とあなたは本来一つ。今ここで触れればあなたは未来を選択する事ができなくなるよ?」


 やっぱり何を言っているのかわからない。


「じゃあ、どうしたらいいの」


 彼女に問えば待っていたかのように一層の笑みを浮かべて返す。


「そうだね、さっきも言ったけど"今日"はもう時間が無い。だからね?終わらせちゃえばいいんだよ」


「……!?待って!ダメェ!」


 そう言って私の横をすり抜け恭香の首を180度回転させた。ゴギッ!!というようなグロテスクな音が耳に入る。5度目……今日はもう見ないと思っていた親友の死を目の当たりにした。


 やはり、深い絶望によって意識を手放そうになる。その直前耳元で「始まりの場所で待ってる。あなたならきっと分かるわよ」と囁く私自身の声が聞こえた。

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