4日目:絶望に暮れる心
目を覚ます。見慣れた天井、変わらぬ風景、カーテンの隙間から挿す陽光、響き渡るアラーム。そこまで認識した私は思う。あぁ、また失敗だ。いや、正確にはわかっていた。それでも、どこか淡い期待を抱いていたせいで心が苦しくなる。
「今日は……どうしよう」
呟く。どうしたらいいかわからない。どこにいてももう1人の私が恭香を殺してしまう。もう何もできない……疲れた……少し休もう。
そう決めた私は1階に降りてママに休むことを告げる。
「ママ……ごめん。なんかあんまり体調良くないみたいなの。学校お休みしたいんだけど」
「大丈夫?あら、顔色悪いわね。無理しちゃダメだし、学校にはママが連絡しておくわ。布団で寝てなさい」
部屋に戻って布団に入る。薄れゆく視界の中で私はある考えに思い至る。このまま私が休んだらどうなるんだろう。私が元凶なら私がいなければあの出来事は起きないんじゃないか?またそんな淡い期待を抱きながら微睡に身を委ねる。
最近は寝た気持ちがしなかったから長い昼寝、いや二度寝はとても心がスッキリとした。時計を見ればちょうど昼休みが終わったぐらいだろう。今、下に降りてもおそらくママには認識されない。時間を潰そう。そう思っておもむろに本棚に手を伸ばすと、自分の本棚なのに見慣れないノートがある事に気づく。
「これ……前は心音の部屋にあったやつじゃ」
それは昨日、心音の部屋の机にあった真っ白な表紙のノートだ。よく見てみるとノートの端などに前見たノートとの違いが見られる。
「見てみるしかないよね……」
ノートを開くとやはり乱雑に書く殴られていて、掠れて読めなかったりするところは同じだった。さらに、字は読めないのに内容だけは頭に入ってくる所も同じだ。けど、その内容自体は前回読んだものとは違うものだった。
『これを終わらせるには……に気づく……どうあがいても気づかなければ終われない。……ためには間違い探し……』
「やっぱり、読んでもわからないね。でも気づき……か。何か見落としてるのかも」
それからの思考はまるで沼に浸かったかのように纏まらなかった。結局、自分が何を見落としているのか気づくことはできずに、その思考は唐突なインターホンに遮られた。あれから、もう数時間。外を見れば夕陽が空を赤く染め上げているのがみえる。
「えっ……!?もうこんな時間!?」
などと考えると玄関のドアが閉まり誰かが上がってくるのが分かる。
コンコンコン
「ナタリー?お友達が来てくれたわよ」
そう言ってママがドアを開ける。その後ろには心音と恭香がいるのが見えた。
「おーナタリー。体調大丈夫か?」
「ごめんね〜ナタリー急に来ちゃって」
「こっち来ちゃダメ!!」
私の声は虚しく響く。私の横を何かの影が通り抜け恭香へと一直線に向かう。またしても一歩遅く私の手は届かない。また、私が恭香を殺した。どこからか持ってきた包丁で親友の首を貫く私が立っていた。
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
「恭香!!!」
彼女の息は喉からヒュー……ヒュー……と漏れ出ており、しばらくしてその呼吸も止まる。4度目、親友の死を目撃した私はやはり意識が保てないほどの絶望に襲われる。
「ナタリー!ダメ!」
今度ははっきりと心音が叫ぶのが聞こえる。ダメ……?何が……?また守れなかった……
「ここで終わったら……!」
泣きじゃくる心音の後ろから不気味に笑う私の顔が見える。その口元は何やら動いているようだ
ま だ 気 づ か な い の
そうか……そういう事なのか……でもごめんね……今回は無理そうだ。私の意識はそこで途切れる。
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