第54話 思い出の話でもするか?ーー君との振り返り
寮に帰ると部屋の電気は消されており勿論俺とザァベストの部屋も真っ暗な状態だ。
しかも隣からは「ぐがぁぁぁごごご」っといびきをかきながら寝ているザァベストがいた
でも身体は疲れていたので今日は早めに寝ようと布団に入る。
だが疲れているのに何故か寝れずにいた
「眠れねぇ……」
眠れずにいた俺は外の冷たい風にあたるべく外に出た。
「やっぱりどこの世界でも夜っていうのはいいもんだな」
しかしこうしてみると懐かしい気持ちにもなる、前世の頃の俺はよく夜中に家を抜け出し外に出ては街中を散歩したことだってあった。
そうだ、まだこんな時間帯なら歩美も起きてるかな?
【転移】を使い王城の俺の部屋にテレポートすると歩美は驚いたのか「オスト兄!女の子の部屋に無断で入るなんて不常識だよ!」っと言う
「ごめんごめんってここ一応俺の部屋なんだけど」
まぁそれはともなく、俺は歩美に外に出てみないか?っと提案する
「うん!いいよ!」
歩美を連れて外に出るのは本当に久しぶりな感じがする。
すると横にいた歩美が王城の屋根の上で座りながら月に手を向けながら話す
「こうしてみるとさ……なんだか懐かしい気持ちにもなるよね」
歩美の横顔を見ながらクスッと笑う
「あぁそうだな…また2人で月を見る日が来るとはな」
屋根に寝転がりながら月を見る俺と座りながら見る歩美……は懐かしさに浸っていた
「じゃあさ!懐かしさ気持ちにもなってるし思い出話でもしない?」
「思い出話?」
「うん!ほら、前世では言えなかったことやあたし達の幼少期の頃とか」
「いいかもな」
その提案に賛同した俺は再び口を開ける。
「俺達は小学生の時よくヤンチャしてたよな」
俺と歩美が余り喋らなくなったのは高校生になってからだ。
つまり中学生までは普段通り喋っていたりよく夜中に出かけていたりした
その記憶が今になって思い返してみると鮮明に思い出す
「そうだよね!あたし達の夜中にコンビニとか行った時店員さんに怒られた時あったねぇ〜本当にあれは凄かったなぁ」
「そんなこともあったなぁ〜、今となればヤンチャだったけど」
「確かにね!」
クスクスと笑いながら歩美は空を眺める。
その姿は前世と同じ目に入れても痛くないほどだ
「それでもさ、あたしはオスト兄が殺された時はどうしようかなって思ったんだよ?」
歩美はさっきまでのテンションとは裏腹に落ち込んだ声で話し込む
俺の死か……前世でもこの世界でも俺は何回も死にかけている
その度に何かしらの運命が働き俺は今のこうして生きている
「俺だって怖かったぜ?いままで信用してきた両親に殺されるなんて夢にも思わなかったから」
「オスト兄……1つだけさ聞いて欲しいの」
「なんだ?」
「オスト兄は自分が殺される瞬間までのことは覚えてるんだよね?でもそれからは分からない」
「まぁな」
「でもあたしはその先の結末も知っているしどうしてあたしがこの世界に転生したのかも言わなきゃ行けない気がするの、でも言っちゃったら怖くて」
歩美は悲しい顔になっておりそれを見た俺は自分の手を歩美の頭に優しく乗せて頭を撫でた。
「ちょっ!?オスーー「別にいいさ」」
歩美の声を被せるように俺はそのまま話す
「お前が喋りたくないなら喋らなくてもいい…だけど俺はお前のたった1人のお兄ちゃんだぞ?なんだって悩みも聞くしどんな事も真剣に向き合う、だから話したい時に話してくれていいんだからな?」
慰めにもなるか分からない言葉を歩美に言うと安心したのか歩美は口を開く
「オスト兄が死んだことを知ったあたしは両親が呑気にコーヒーを飲んでいる所を後ろから包丁で刺し殺してあたしもそのまま自害しちゃった」
話を聞く限り歩美は俺が殺されたことに腹を立て両親を痛めつける様な形で刺し殺し最後は自分で死んだということらしいのだった
「なるほどな…でも前世では仕方なかったけどさこれからは危ないことはやるなよ?」
「はーい」
分かってくれたのか歩美はしょんぼりとしながら返事をする
それと同時に思ったこともあった
歩美は俺の仇を取る為だけに自分の手で両親を殺した
でも俺は悲しい気持ちにはならなかった、勿論歩美が死んでこちらの世界に来たということは向こうの世界で経験するはずだった結婚や修学旅行も体験するはずだったのに体験もせずにこちらに来てしまった
でも両親ばかりは自業自得だなっと思うのだった。
「そろそろ夜も明けるし部屋に戻りな」
「分かった」
歩美を自室に戻すと俺は一言「おやすみ」っと小さな声で言い寮に戻った。
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