第20話 婚約者

最強と謳われしドラゴン…ベクトロンとの従魔契約をし約1週間が経ち今日は以前から言われていた、婚約者達との対面の日だ。


「なんでスーツなんて着なきゃ行けないんだろうな……」


「主…それは相手に悪い印象を与えないためなんじゃないですか?」


「我もそう思うぞ……だが数百年生きてきてるが人間は大体そんな感じだぞ?」


「へぇ〜よく知ってるな…ベクトロン」


前世でもお見合いとかはスーツとかだったけど合コンとかは私服だもんな……。


どうも俺はそんなことは一切体験したことがないのでよく分からなかった。


当たり前なのだが……


するとドアからコンコンっと鳴らす音と同時に母さんの声が聞こえた。


「オスト入ってもいい?」


「大丈夫ですよ」


母さんは部屋に入ってくると目を輝かがやかせたまま俺のスーツを色々といじり回した。


「あの、要件は……」


「あぁ忘れてたわ……もうそろそろ行くから準備しといてね」


「了解です」


その言葉を言い残すとルンルンみたいな感じでスキップしながら部屋を出ていった、その数分後…………


オスト〜〜〜!!!っと泣きわめきながら俺の声を呼ぶ父さんの姿が見えた。


(また面倒臭いのが来た………こうなると面倒臭くなるんだよな…ったく父さんは)


溜息をつきながら俺は父さんに要件は?っと言うと泣きながらこちらを見てきた。


「要件はない!だけどオストが婿に行ってしまうとなると俺が悲しいんだよぉ」


「ったく……父さん俺別にまだその婚約者の所の何処かに婿に行くなんて決まってないからね?」


泣きわめく父を見た俺は引きずりながら母の部屋の元へ向かった。


「はい、これどうぞ……」


「オスト……流石に隣でいい歳こいた人が5歳児泣きつきながら連れてこられる光景を見せられてるのは……私だけ?」


「多分ノスト兄は知ってるかもしれないですね……」


「そう………」


父さんを引き渡した俺はもう一度部屋に帰り準備をした


「さてと……スーツの見た目はおっけーかな?」


(にしても…婚約者が3人ってどんなんだよ……俺別に婚約者とか結婚とか要らないんだけどなぁ………今のところは)


スーツの見た目を完璧に揃え俺は鏡を見ながら伝説の言葉を思い出した。


「鏡よ鏡!世界で1番美しいのは誰?」


っと誰でも知っている白雪姫の物語に出てくる伝説の言葉なのだが…ここは異世界だ…知ってる人はもちろん居ない………。


「オスト〜準備出来た?」


「母さん準備出来てますよ」


「なら玄関に来てね」


「はい」


そうして俺は玄関に着くと目の前にはかなりの高級そうな馬車が手配されていた。


(めっちゃ高級そうだな………庶民派の俺にとっちゃー身体が震える………)


震えながらも馬車に揺れること小1時間遂に婚約者と対面する場所に着いた。


「ここは………確か」


そこは子爵家の屋敷だったのだ。


その時俺はあることを思い出した………。


(確か子爵家の子供の女の子って…エミリア・クラントって名前だったよな?)


エミリア・クラントはホンマントゲームで数々の超難関ダンジョンを1人でクリア出来る程の魔法を持つ賢者なのだ。


(エミリアが賢者となるのは勇者パーティに入ってからの話だけど…それは10年後先の事だ……原作改変でもしたらまずいな)


原作改変をした場合俺の知らないストーリーになってしまい最悪勇者パーティその物がなくなってしまうかもしれないのだ。


俺は内心焦りながらもあることを心に決めた。


(よし!婚約の件は破棄してもらおう!)


決心した俺は両親と一緒に婚約者の元に向かった。



屋敷に入るとそれはまた綺麗なメイドさんと有能そうな執事やらまるで「子爵家はお金持ちで常にお金がありますよぉ〜」みたいな感じだった。


(それにしてもやけに気合が入ってるな……これも婚約の為なのか?なら罪悪感が湧くなぁ……)


罪悪感を湧きながら周りを見ていると目の前の階段から青い髪色で綺麗なドレスを着た女の子が来た。


「こんにちわ…私はエミリア・クラント…この子爵家の娘です」


「俺はオスト・ベンフォント…宜しくね」


とりあえず挨拶を済ますと何故か俺とエミリアは別室に連れて行かされた。


「それではオスト様…エミリア様あとはおふたりでごゆっくり……」


有能そうな執事はそう言い残すとバタンとドアを閉めルンルンっと壁の向こうから声が聞こえた。


(さてはここの両親や俺の両親達謀ったな!?裏切られたァァァって嘆いても仕方ないか………)


深呼吸をし俺はエミリアの方を向きお茶を啜った。


「オスト様……」


「ん?」


お茶を飲んでいるといきなりエミリアが俺に話しかけてきた。


「え?な、なに」


「あの!婚約者の件なんですが……ぜひ私を選んでください!!」


「え〜いきなりそんな事言われても……」


「そ、そうですよね……私なんて選ばれるはずが…」


何かと勘違いしたのかエミリアはしゅんとテンションが低くなり下を向きながらネガティブ思考になった。


「あのさ…なにか誤解してるかもなんだけど…別に君が嫌だからって訳じゃないよ?ただまだお互いを知らないのにいきなり婚約は違うかなって……」


「そ、そうでしたか!!」


エミリアはホッと安心をしたのか再びテンションが高くなった。


しかしなんでまた私を選んでください!なんて言ってきたんだろうか俺にはさっぱりだった。


そしてエミリアとしばらく話し込んでいるとドアからコンコンっと音が聞こえた


(誰だろう……)


俺は頭に?マークを浮かべたまま立ち上がろうとするとエミリアが「待って」っと言ってきた。


「え?どうしたの?」


「私が出るわ」


「そ、そう?」


俺はその威圧感を出したエミリアに言われ大人しく座るとエミリアは立ち上がりドアを開けた。


するとそこに居たのはさっきの有能そうな執事と女の子が2人居た。


「エミリア様…シルク様とリベストア様です」


「ありがとうね…下がっていいわよ」


「はっ……」


そのまま有能そうな執事はどこかに行ってしまい代わりに美少女2人組が部屋に入ってきた。


「オスト様!こないだは助けて下さりありがとうございます…シルク・ガァントンです」


「わたくしは…侯爵家の娘…リベストア・アガリータです」


挨拶してきたのは俺がこないだお披露目会で助けたシルクと侯爵家のリベストアだった。


「俺はオスト・ベンフォント宜しくね!」


「「はい!」」


2人は息が合ったように返事を返すとエミリアの横に2人とも座り俺と向かい合わせに座った。


それはそうと…俺は婚約破棄の件をどう言おうか迷っていた。

ここで怒らせてしまうと…二度と俺と話してくれないかもしれないのだ。


分からないけど………。


「それにしてもシルクも俺の婚約者だったなんてね」


「私もびっくりしましたよ!」


(ほんとにびっくりだよ……勇者パーティの一員となる剣士の人が婚約者なんてね………あはは)


でもとりあえず俺は慎重かつ丁寧に婚約の件を断ることにした。


「それでね……3人とも悪いんだけど今回の婚約の件は無しって事でいい?」


さっき慎重かつ丁寧なんて言葉を言っちゃったけど何故か知らないがドストレートに解消の件を言ってしまった。


しかしそれを聞いた3人は怒った様子もなく……しばらく無言になった。


俺はキョトンとしながらお茶を飲んでいると


「「オスト様!!!」」


っとでかい声で呼ばれるものだから焦った俺は器官に水が入ってしまい咳払いをした。


「ゴホ!ゲホ!あー死ぬかと思ったぁ〜」


「何でそうなるんですか!?オスト様!」


「あぁそのまま話す感じなのね……エミリア………」


俺はその場で改まり頭を下げた。


「すまない……だけどまだ君達には君達の人生があるだろ?俺に婚約者なんて似合わないしさ………」


俺は3人にすぐ答えを出してくれると信じていた……「分かりました」っとたったその言葉でこの子達の人生いやストーリーとしては成り立つはずだ。

俺の乱入でストーリーが変わるのは許されないはずなのだ。


その時、バチン!!っと訳も分からないまま俺はエミリアに頬を叩かれた。


前を見ると3人とも泣きそうな目で俺の事をじっと見てきた。


「な、なんで君たちが泣くの!?別に泣かなくても………」


「オスト様……1つ言っておきたいことが……私達は自分の意思でここに来ました!いまさら心を変える気なんてないです!」


「って言われても………」


「そうだよね!?2人とも?」


「はい!オスト様に助けられ私はオスト様を大好きになりました!絶対に婚約破棄なんて許しません!」


「わたくしも今日初めて会いましたが……オスト様のお人柄や性格に誘われ好きになりました……。」


彼女達はそう言うと俺にある提案をしてきた。


「オスト様……それじゃあ〜10年後までに私達がまだオスト様を好きでいたらその時は婚約いえ結婚してくれますか?」


「ん〜まぁそれならいいよ………」


俺は仕方なくエミリアのその提案を飲んだ………

だが俺はある確証を得ていた。


これは婚約破棄の仮みたいなものなのだ…だから彼女達に見合う男はいつか現れると思うし俺のことは忘れるはず……だから『結婚』なんて言葉は二度と現れないだろう………。


そう約束を彼女とし俺は王城に帰った。


とはいえ……両親達いや母さんからはなんで破棄したの!?なんて怒られたが仕方がないのだ……理由は言えないが………


それからというもののあっという間に10年と言う歳月が経ち俺は15歳になった。


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