公子、システムのすごい効果に気づく

「あら、セリム、ちょうどいいところに。お話がありましたの」


 放課後、ナディアのところに行くと、いつものソファを勧められて、俺好みの紅茶が出てきた。


「私の知り合いの女の子たちがね、もうすぐ開催されるダンスパーティーで、セリムと踊りたいと言っているのよ」


 まだ他にも立候補者がいたのか!

 ドゥランテ宮中伯令嬢が王家の関係者、それ以外はナディアのところに話が行ったんだな。


「おい、まさかと思うが、うちに直接申し込んでいる者もいたりするのか?」


 ヴァレリーに聞いてみる。


「はい。ですが、外部の方からこれだけ申し込まれたのです。うちの者は諦めさせます」


 当然のようにヴァレリーが言う。

 一体何でこんなことに。ダンスの申し込みは、普通は当日でいいものだし、誘うにしても、男から言う方が多い。女性から申し込んじゃダメってことはないんだけど。


「王家の関係者からも申し込みがたくさんあって、困っていたから、ナディアに相談しに来たんだ。何でこんなことになったんだろう」


 俺は美人の母親に似たから、外見が整っている方ではある。でも、前世ではこんなにモテなかった。ダンスも、付き合いで何人かと踊れば済んでいたし。


「集団心理ではあるかもね。皆が素敵と言うものが素敵に見えてくる」

「知ってます? セリム公子の非公式ファンクラブがあるのよ」


 笑いながらパメラとジュリエッタが教えてくれた。


「セリム、女の子にキャーキャーされても、変に手を出したりしないじゃない。だから、アイドル的な人気になったのかも」


 そりゃあ、ちょっとでもよこしまなことを考えたら、経験値が減ってしまう。<システム>に、心の中まで監視されているからな。悪魔の問題が解決しない限り、俺はどれだけモテようが、草食男子だよ。酷い話だな。


「でも、それだけじゃないと思う。外見とか性格とかじゃなくて、何か、オーラみたいなものが違うのよ」


 はい?


「分かるかも。以前に、帰宅前の暗がりで会ったとき、何か、セリムの周りだけ発光してたわ」


 どゆこと?


「あー、それなら、俺も分かります! 公子が貧民の病気を治しているときとか、天使か妖精みたいに見えることがありましたよ」


 パメラとジュリエッタの話を聞いていたら、ギルベルトまで口をはさみだした。


 まさか、<システム>の作用か?

 俺の<求道者>レベルも、もうすぐ70だ。聖人に近付いているとしたら、特別な存在に見えるのかもしれない。

 でも、女性に手を出したら、レベルを下げられるんだぞ。鬼<システム>じゃないか。

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