公子、ムカつく奴らに勝つ

 学園の対抗戦は、自由参加のエントリー制だ。

 授業内容がショボい学園において、対抗戦はメインコンテンツと言える。各家の貴族が、実力を皆に知らしめる場だ。月に1回開催され、ルールは毎回異なる。俺とナディアが組んでエントリーした試合は、1週間後に開催された。

 今回の対抗戦は、6対6のチーム戦だった。それぞれが固定されたガラスのオブジェを守りながら戦い、先に相手のオブジェを壊せば勝ち。妨害のための対人戦闘は許されるが、相手に大怪我を負わせると、その場でチームごと失格になる。


「作戦はシンプルに。セリム1人でオブジェを守って。他、全員で相手の陣地に攻め込みますわ」


 試合開始と同時に、ナディアが妨害魔法の「デコイ」を使った。これで、オブジェを複数人で守っているように見せながら、俺以外全員で速攻する。

 味方メンバーは、俺、ナディア、リーゼロッテ、ギルベルト、パメラ、ジュリエッタ。

 王都民の勇者レオは、未だ王家所属となり、対抗戦にエントリーできていない。うちの訓練には来ていて、順調に育てられているので、それで様子見だ。



 1回戦から準々決勝まで、順調に勝ち上がった。

 準決勝の相手は、サルミエント侯爵家のマルクのチーム。この頃には作戦がバレて、俺が1人でオブジェを守っていると知られていた。守りが薄いと見て、マルクのところも、5人で攻撃をしかけてきた。


「結界から出ろ! 卑怯者っ」

「5人で囲んで、俺1人の結界を破れない奴が、何を言っても無駄だ」


 5人がかりで、俺の結界を剣で叩いたり、魔法を撃ちこんだりしているが、余裕で防げた。


「クソッ、剣で勝負しろ!!」

「剣なら勝てるとでも言う気か? 身体強化込みなら俺が勝つぞ」

「なら、剣で勝負しろー!!!」


 などとやりあっている内に、ナディアが敵のオブジェを破壊してくれた。



 決勝戦の相手は、王女のチームだった。

 王女が1人でオブジェを狙って攻め、他は守備を固めているようだった。

 王女と1対1。

 俺は、亀のように結界の中に入って身を守っていた。王女は強いが、1人で来てくれたので、メインの結界の外側にもう1枚、攻撃に合わせた障壁を出し、MPを節約しながら耐えた。


「思ったより長く持ちそうだな」


 防御に徹すれば、王女相手でも、俺1人で意外と何とかなった。しばらく粘っていると、敵のオブジェが先に破壊されて、勝利が決まった。


「この屈辱はいずれ返す」


 王女は俺にそれだけ言って、去って行った。



「優勝ですわー!」


 ナディアが高笑いしている。

 入学早々、最強王女に土をつけた。王家の次代がいくら強かろうと、大貴族が協力すれば対抗できると、証明して見せたのだ。


「ふふふ。わざわざ王都の学校までやって来たのです。王女にしっかりと力関係を勉強していただきますわ」


 ナディアが恐い。まあ、今は味方だから、頼りになるのかなぁ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る