公子、侯爵令嬢と友達になる
翌日放課後、ラウラを連れて、ルヴィエ侯爵令嬢のもとへ向かった。学園特別棟のルヴィエ家のサロンは、俺たちがもらったのと同じような部屋だった。だが、主が女性だからか、うちより華やかな感じがした。
案内されてソファーに座る。すぐに女子生徒の1人が、俺の前に香りのよい紅茶を置いた。
向き合う席には、中央にナディア・ルヴィエ侯爵令嬢、左隣にパメラ・サティ伯爵令嬢、右隣にジュリエッタ・ジャノー子爵令嬢。……全員可愛いから、面と向かうとすごい迫力だ。
俺は隣にラウラと、絶対ついてくると言い張ったギルベルトを座らせた。後ろにヴァレリーも控えて立っている。
「本日はどのようなご用件でと聞くところですけど、隣の娘を見れば、大体の事情は分かりましたわ」
ルヴィエ侯爵令嬢のことだから、俺が面会の申し出をした時点で、用件を調べて把握してしまったことだろう。
「この娘、ラウラ・ポネッティが、学園で孤立していて危ない状態です。しかし、私が直接助けて、彼女が不名誉な誤解をされるのも避けたい。そこで、力を貸していただきたいのです」
「うふふ……。公子はお噂通りお優しい方ですわねぇ」
ルヴィエ令嬢はニコニコしている。彼女は会うたび、俺を褒めてくれる。今世の俺は、まあ良い子にしているから分からなくもないが、前世でも、彼女は会うたび、俺の良いところを探し出していた。今思い出してみると、おっかない女である。
「でも、実力者の平民レオは自分のところで囲い込み、能力の足りない娘は私に押し付けるなんて、結構なキツネさんですこと」
彼女の表情は笑顔のまま。こういう感じだから、一瞬、言われたことの意味が分からなくなることがあった。
前世での結果を知っていれば、ルヴィエ侯爵令嬢は、身を粉にして多くの民衆を救った清い人物。だが、貴族としては、ひとくせあるタイプだった。だから、苦手だったんだ。
「ラウラ・ポネッティのことは、男の自分には対処しにくいと思っただけです。それと、レオの引き抜きには、まだ成功していません。気になるなら、そちらも声をかければよろしい」
王国の崩壊後、レオはルヴィエ侯爵令嬢と協力して、民衆を守っていた。彼女なら、上手くレオを育てて使えるだろう。
「それは、それは。ラウラ・ポネッティの庇護は引き受けましょう。困っている生徒を放ってはおけませんわ。でも、せっかく公子にお願いされたのです。何か見返りを頂きたいですわぁ」
ニヤリと微笑まれた。何ていうか、男相手には絶対感じない恐怖感なんだよな。女の人特有の恐ろしさというか……。
「見返り? 出来ることと出来ないことがあるぞ?」
「学園の対抗戦で、一緒にチームを組んでいただけないかしら」
「チーム? うちとルヴィエ家が組んだら、強くなりすぎるぞ?」
「それが狙いですわ。王家自慢の王女に圧勝して、地方貴族の恐ろしさを、幼い王女に叩き込んで差し上げるのですわ!」
ベルクマン公爵家やルヴィエ侯爵家のような地方貴族は、王家に従っているが、半独立してもいる。ルヴィエ侯爵令嬢は、強い王太子を得て調子に乗りそうな王家を、ここで叩いておく気だ。後に民のために悪魔と戦い続ける人だと知らなかったら、中々の野心家に見える。
「分かりました。協力しましょう」
俺としても、王家一派の酷さを見ていると、鼻っ柱を折ってやりたくなっていた。
「でしたら、我々は仲間ですわ。いつまでもルヴィエ侯爵令嬢と呼ばれるのは堅苦しいわ。ナディアとお呼びくださる?」
「分かりました、ナディア。俺のことはセリムと」
「ふふ。よろしくお願いしますわ、セリム」
ナディアに続けて、彼女の派閥のパメラとジュリエッタも名前で呼ぶことになった。他家の女子と名前を呼び捨てし合うほど仲良くなるのは初めてだな。
《
《 現在のレベル:38 現在の経験値:2820/3900 》
将来、<システム>の製作者に会うことがあったら、1回氷漬けにして割ってみよう。
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