公子、テンプレキャラ扱いされる

 公爵家の屋敷に戻ると、側近を集めて会議した。


「とにかく、そのラウラ・ポネッティって子が可哀そうなんで、何としても助けるべきなんだ! 貴族として、あのような娘を放ってはおけない!!」


 ギルベルトが皆に熱弁する。燃えているところ悪いが、この問題にコイツは役に立たないだろうな。というより、男だけで解決するのが難しい。女性の協力が必須だ。


「リーゼロッテ、どう思う?」


 俺は子爵令嬢リーゼロッテに意見を求めた。


「私が皆さまと同じ1年生でしたら、私のフォローで何とかなりました。ですが、生憎あいにく、私は3年生。接する機会が少なすぎますわ」


 リーゼロッテが先輩だったのが痛い。俺の派閥は男の方が多く、女性で来ているのは爵位のない家の娘ばかりだった。ラウラの防波堤にするには弱い。


「うーん。セリム公子が、『これは俺の女だから手を出すな』って言っちゃえば、万事解決するのではないですか?」


 リーゼロッテの発言に、ギルベルトが目をいた。


「俺にその気はないぞ。その気もないのにそんな発言したら、それこそラウラの人生を狂わせるだろう」


 何せ俺は、<求道者>システムに縛られた聖人候補だぞ。愛人なんてとんでもない。


「うーん、困っている美少女を助けるイケメン公子と身分違いの恋って、物語なら素敵なんですけどねぇ」


 リーゼロッテは目をキラキラさせながら妄想を口にする。


「ああ、そういう小説が流行っていて、俺がその登場人物に似ているんだろう? そんなの、現実になったら、ただれた関係にしかならんだろう」

「公子の口から『爛れた』なんて言葉、聞きたくないですわぁーん」


 コイツ……。何で俺の側近は変な奴ばっかりなんだ。俺をのぞくと、派閥で身分が高い順に、脳筋のうきんのギルベルト、変人のリーゼロッテ。これを使いこなすのが、俺の貴族としての器か。


「でも、真面目な話、解決策はありますわよ」

「何?」

「公子の学年には、ちょうどいい女ボスがいるじゃないですかぁ」

「女ボスって、……ルヴィエ侯爵令嬢のことか?」


 ナディア・ルヴィエ侯爵令嬢。前世では、悪魔との戦いに最後まで挑み、多くの民衆を救った女傑だ。確かに、事情を話せば、ラウラに協力してくれそうだ。


「公子が直接ルヴィエ侯爵令嬢に依頼すれば、彼女は断らないでしょう」

「なるほどな。ヴァレリー、ルヴィエ侯爵令嬢に連絡を。明日の放課後、話したいことがあると伝えてくれ」

「かしこまりました」


 ルヴィエ侯爵令嬢、前世では苦手だったんだよな。まあ、悪いことをしているのではないし、正直に頼めばいいか。


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