公子、レベルが上がる
2カ月が経った。
アマンダは使える女だった。
1人暮らしの老人である彼女に、力はないように見える。しかし、彼女は地域に、広い人間関係のネットワークを持っていた。
彼女の知り合いの困り事を解決していけば、順調にレベルが上がった。
《 アマンダの家の掃除をしました 経験値が上がります 経験値が+10されました 》
《 現在のレベル:-1 現在の経験値:890/1000 》
ふふん。掃除も慣れたものだ。魔道具でも屋根でも何でも修理、掃除もできる、俺は立派な街の便利屋だ!!
《 デイリークエスト<一日一善>を達成しました 》
《 <祈り><一日一善>がともに達成されました クエスト報酬で経験値が上がります 》
《 経験値が+500されました 》
《 レベルが上がります 》
《 レベルが上がります 》
《 新着メッセージがあります 》
《 新しいスキルを獲得しました 》
《 レベルが上がります 》
《 現在のレベル:2 現在の経験値:90/300 》
「やった、ついにマイナスを脱出したぞ!!!!」
俺はアマンダがいることも忘れて、大声を出して小躍りした。
「うるさいね! おとなしくしなっ」
アマンダに怒鳴られる。
「ふふ。今日はとてもいい日だ。天国にいるみたいだ」
「ああそうかい。儂から見たアンタは、出会った日からずっと、頭の中がお花畑の人間だったよ」
憎まれ口を叩きつつ、「良いことがあったんなら、祝ってやるよ」と言って、アマンダはさっき買ってきたリンゴをむいてくれた。
リンゴをシャリシャリと食べながら、<システム>の画面を眺めた。いつもよりたくさんのログが流れていたので、確認していく。
レベルが2になっていた。どういうことだ?
《 現在のレベル:2 現在の経験値:90/300 》
レベルがプラスになると、必要経験値のルールが変わったのか。
レベルがマイナス1のときに、経験値が500入ったらレベル2になった。
レベル-1(1390/1000)→レベル0(390/100)→レベル1(290/200)→レベル2(90/300)と仮定すると、
プラスの数字のレベルは、<次のレベル×100>の経験値が必要ってことか。最初は楽だが、段々大変になるな。
《 新着メッセージがあります 》
「メッセージ? 初日に見て以来だな」
《 メニュー: 》
《 ▽ステータス New! 》
《 ▽スキル New! 》
《 ▽クエスト 》
《 ▽メッセージボックス New! 》
<New!>のマークが3つも出ている。確認しよう。
《 メッセージ:未読1件 》
《 治癒スキルを獲得しました New! 》
「<治癒スキル>だと?」
治癒魔法なら知っているが、<スキル>というのは違うものなのか?
《 治癒スキルを獲得しました 》
《 治癒スキルは、システムによって、あなたに与えられた能力です。スキル画面から使いましょう 》
「<スキル>画面、以前は白紙だったやつか」
《 スキル 》
《 治癒 》
《 簡易治療…小さな切り傷やすり傷を治す 》
「簡易治療? 小さな傷しか治せないのか。弱ったな」
切り傷程度は、身体強化魔法を使えば、一瞬で消える。魔法を使わなくても、魔力があれば、自然と自己治癒力を高めているものだ。小さな怪我は、すぐ治ってしまう。軽傷を放置している者を、探さないと試せない。
「アマンダ、小さな切り傷を放置している者を知らないか?」
「さっきまで、ブツブツ妙な独り言を呟いていたと思えば、いきなり何を言い出すんだい?」
「治療できるようになったらしい。試してみたい」
「はぁ? 治癒魔法なんて、滅多に使い手はいないよ。……まあ、アンタなら何でもありか」
そう言うと、アマンダはテーブルの上の果物ナイフで、自分の指をプスリと切った。
「ほら、小さな傷だよ。これでいいかい?」
「いや、怪我を作れという意味では……」
「いいから、さっさと治しな! 血が出て困るだろ」
俺は困惑しながら、アマンダの傷を見た。
<システム>によると、治療できるらしいが、自信がない。普通、使える系統の魔法は、直感でマナの動かし方が分かる。だが、俺には治癒魔法が使える感覚が、全くなかった。
不安に思っていると、<システム>の画面が現れた。
《 治療可能な傷があります 治しますか? はい/いいえ 》
<システム>から選択して使うのか。<はい>を押してみた。
すると、身体強化魔法を使った時のように、傷が内側から閉じていった。
「治せたようだね」
アマンダが
どうやら、俺が魔法を覚えたのではなく、<システム>の機能が拡張して、出来ることが増えたということらしい。
アマンダの指の治療は、俺の為につけた傷を治したものだから、経験値の増減がなかった。善行として、治療の経験値がいくつになるか知っておきたい。
「アマンダ、次は、自傷じゃなく、自然にできた傷を治したい。誰かいないか?」
「そうだねぇ。空き地で遊んでいる子どもなら、あちこち怪我してるんじゃないかい」
子どもか。確かに、魔力が低くコントロールの下手な幼子なら、怪我を放置してそうだ。
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