公子、魔物退治をする
村で1泊した早朝、俺は朝日に向かって祈りを捧げた。
《 デイリークエスト<祈り>を達成しました 》
その後、皆がゴブリン討伐の準備をしている間に、昨日村長が言っていた、農作業用の魔道具を修理した。
《 村人の魔道具を直しました 経験値が上がります 経験値が+100されました 》
《 現在のレベル:-46 現在の経験値:210/1000 》
《 デイリークエスト<一日一善>を達成しました 》
《 <祈り><一日一善>がともに達成されました クエスト報酬で経験値が上がります 》
《 経験値が+500されました 》
《 現在のレベル:-46 現在の経験値:710/1000 》
「ふむ。城に居る時より、<デイリークエスト>はやりやすいくらいだな」
後は、ゴブリンを退治して帰るだけだ。
村人の案内で、西にあるというゴブリンの集落に向かった。
案内されたのは、森林の中の岩場で、大きな石に阻まれて、木々がまばらになっていた。
その中で、ひときわ大きな岩を玉座のようにして、1匹のホブゴブリンが座っていた。あれが群れのボスだろう。
このボスの周囲のゴブリン数匹は、立派な武器を持っている。中でも、杖を持つ2匹は、魔法を使うゴブリンメイジだ。
群れは、全部でおよそ30匹。集団の端にいる弱そうなゴブリンは、連れてきた取り巻き連中でも、怪我せず倒せるだろう。だが、逃げられると厄介だ。
「バレないように囲め。中央のホブゴブリンは俺がやる。お前たちは、逃亡を許さないように、注意して戦え。ギルベルトは遊撃で、敵が多いところに」
皆の移動が完了したところで、まず、目立つように俺が1人で群れに突入した。
身体強化と補助魔法で速度を上げ、一気に中央のホブゴブリンに近寄る。突然の襲撃にも、敵はすぐに武器を構えて応戦した。
「フリーズ」
遠距離から俺に弓を向けていたゴブリンの全身を、氷結魔法で凍らせる。
《 交戦状態の魔物を殺しました 経験値が下がります 経験値が-100されました 》
「アイスバレット」
重剣を振り上げて俺に切りかかってきたホブゴブリンの肩と手首を、氷の弾丸で撃ち抜く。
バランスを崩したホブゴブリンに、体当たりするように剣を突き刺し、切り裂いた。
《 交戦状態の魔物を殺しました 経験値が下がります 経験値が-100されました 》
死んだホブゴブリンの身体を突き飛ばした瞬間、左右からファイアボールが飛んできた。
「ゴブリンメイジか……」
敵の魔法は、俺の近くまでくると、かき消えた。
いぶかし気な顔をするゴブリン。
「結界魔法だよ。お返しだ、アイスバレット!」
ゴブリンメイジ2体を撃ち殺した。
《 交戦状態の魔物を殺しました 経験値が下がります 経験値が-100されました 》
《 交戦状態の魔物を殺しました 経験値が下がります 経験値が-100されました 》
味方がやられるのを見ていた短剣持ちのゴブリンが、俺の前から逃げ出そうとする。
背中ががら空きだ。
「アイスバレット」
《 魔物を殺しました 経験値が下がります 経験値が-1000されました 》
「あれ? えぇ!?」
減少経験値が10倍になった。
さっきまで1匹につき100減るだけだったのに。
「逃亡した奴に追い打ちしたからか? ログが、<交戦状態の魔物>から、ただの<魔物>に変わっている」
などと状況を忘れて考え込む俺の背後に、剣を持ったゴブリンがこっそりと近づいていた。
「フリーズ」
《 交戦状態の魔物を殺しました 経験値が下がります 経験値が-100されました 》
背後のゴブリンを凍らせると、俺の近くの敵はいなくなった。
周囲では、皆がそれぞれゴブリンと戦っていた。だが、一点突破を狙ったゴブリンたちが、同じ方向にまとまって走り出した。
「スリップ」
ゴブリンたちの足元を土魔法でぬかるませて滑らせる。
慌てていたゴブリンがたくさん引っかかってくれた。
それに、ギルベルトが飛び掛かる。
「さっすが大将。お前ら、公子が獲物を残してくれているんだから、しっかり討伐数を稼いでおけよ!」
ギルベルトが上手いこと言ってくれたので、それに乗っかって俺は戦わず、周囲の戦闘を見ておいた。
「公子がいらっしゃったら、監督の私は不要でしたね」
隣に監督教師のカティアが並んで立った。
「ですが、もう少し剣術も使っていただかないと。私が教えているのに。剣を動かすより魔法の発動が速いというのは、特筆すべき才能ですが」
普通、魔法の発動には溜めの間がある。しかし、俺はその辺がずば抜けて速い。発動の速さと手数の多さでは、勇者にも勝っていたと思う。
カティアと話しながらも、攻撃を受けそうな味方の前に障壁を出し、サポートはしておいた。
《 現在のレベル:-47 現在の経験値:210/1000 》
しばらくして、全てのゴブリンを倒すことができた。
結果として、魔物退治は経験値を下げることが判明した。
生き物を殺すのは、<求道者>の思想に反するらしい。
ただ、人間を害そうと襲い掛かってくる魔物相手だからか、経験値の減少は、大した量ではなかった。
<求道者>としてレベル上げを続ける限り、俺が武勇を誇ることは出来なくなった。だが、必要な時は、魔物と戦っても何とかなりそうだ。
旅は無事に終わり、夜には領主城に帰り着いた。
明日からまたレベル上げを頑張ろう。
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