月の光

齊藤 涼(saito ryo)

月の光

月の光を浴びて青く浮かび上がる少年の姿、木々の根の張り出した山道を黙々と歩く。月の光が妖しく誘う森の奥、微かに聞こえるピアノの音色。行き着いたのは寂しげな湖畔、そこで僕はピアノを奏でている彼を見つけた。長いまつげを伏せ憂いを帯びた表情は切なく、湖面には音が滑るように密やかに流れていた。赤い玩具のピアノに覆い被さり、その小さな鍵盤から奏でられる儚く美しい旋律。僕はそのまま木に寄りかかって寝てしまい、目を覚ました時にはもう彼はいなくなってしまっていた。主人を失い冷え切った鍵盤をそっと撫でると、ピアノは一度だけ小さく鳴った。

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月の光 齊藤 涼(saito ryo) @saitoryo

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