第9話

電車に乗って、スマホを取り出すと、連絡がいくつか返ってきていた。数時間前のふくくんからは。


「大人達に連絡が終わったよ。」


と。


「ありがとう。助かる。」


と返信する。そしてかいさんからも、


「報告が終わった。施設の方にも連絡したけど大丈夫か?」

「...それっていつ頃連絡しました?」


...なんとも、変なことが起きている。つまり...どちらかが嘘をついているのか、施設の方が何も言わなかったのか。するとかいさんから。


「?さっきだけど。」

「どのくらい?」

「あぁ...。一時間はギリ経ってない?くらい?」


なるほど。嘘をついている方はかいさんの方だ。でも今嘘をついていることを言ったって特に何にもないので返信はしない。



私。紫雲しうん 香織かおりは、患者のにのまえ 英橙えいとに呼ばれていた。


「どうしたの?英橙えいと君ー。」

「逃げて行った。」

「?...誰がー?」

かけるくん。駅の方。」

「ふふ。ありがとう。」


そうして駅に向かうところで。


「あ、香織かおり君。」

「どうしたんですか?伊黒いぐろ先生。」

白石しらいしさん達知らない?」

「いや、知らないですね。」

「見て来てくれないかな。かける君は僕が追ってくるから。」

「わかりました。」

「見つけたら、すぐに追って来て。そうだ。茶郷さごうさん呼んでおくからさ。」

「ありがとうございますー。」


ということで。自分の車に乗り込み、エンジンをかける。


「逃げれると思うなよ。」


と、エンジンで振動している車の中で、小さくつぶやく。



電車から降り、駅から出る。...なんだろう。いつもより、視線を感じる。


「ねぇ。いつもより、視線感じない?」


隣にいた葵衣に聞く。


「うん。感じるね。ということはもう追って来た...?」

「じゃ、することは...。逃げるだけ!」

          「逃げるだけ!」


ということで、いろんな見たことある道を走りながら、家を目指す。



「見つけた。皆さん、彼は北久留米きたくるめ駅にいます。」

「「「「了解」」」」


報告終わり。つまりここで俺の仕事は終わり、俺の出番は終わり。あとは他で捕まえて、ハッピーエンド。と、思っていた。


「やぁやぁ。こんな薄暗いところでこんなことをしているなんてねぇ。」

「お前...まさか...」


そこで彼は喋らなくなった。いや、もう喋られない。


「っと。これで...三人目か。」


そんな漠然としたことを、一人しか生きていない部屋でつぶやいた。



...やがて、走っていると、かつてトラウマだったにやってきた。


「ここって...。」

「うん。朱音が死んでしまった場所。」

「...」

「ごめん。辛いよね。」

「いや、過去は乗り越えなきゃ。」

「やっぱり君は強いや。敵わないなぁ。」

「そっちも。乗り越えたでしょ。」

「...うん。辛いけどね。」

「...行こうか。」

「...そうだね。」

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