第7話

...小鳥のさえずりが聞こえる。目をうっすらと開けると、日の光で明るくなった病室にいた。


体はあまりにも状態がいい。昨日より、痛みがなく、動きやすすぎる。


つまり、何かしらの薬をあの水町みずまちに入れられたんだろう。


というより、記憶はどこまで残っている?

昨日は...定期検診をして、ふく君に連絡して、手紙を読んで、オセロやって、捕まって、実験された。...うん。ちゃんと覚えてる。


そして、焦っていた理由も。


ベット脇にある、自分の荷物を取り出す。今度はちゃんとノートだけを取り出す。


パラパラとめくり、過去の自分が何をしたか確認する。


まず、

ここから抜け出すこと。

それには葵衣あおいが助けてくれること。

一度目は失敗したこと。

裏切り者は必ずいること。

がざっと見た感じ書いてあった。


一個目とニ個目はいい。だが三、四個目がわからない。きっと裏切り者がいたから、失敗したんだろう。すると...


かける〜。お見舞いにきたよ〜。」

「あ...あぁ。りんちゃん。」

「どうしたの。あまり浮かない顔して。」

「いやー。結構悪化してきたなぁ、って思って。」

「あー...。その...大丈夫?」

「うん。大丈夫だと思うけど...。あまり喋りたくはないかな。...苦しくなることはわかっているから。」

「あぁ。そうなの。どうする?お母さん。」

「うーん。というよりそんな状態で大丈夫なの?看護師とか呼んだ方が...。」

「いや。大丈夫。...ごめん凛ちゃん。トイレ行きたいから、そこから車椅子出してくれない?。」

「あぁ。うん。...はい。」

「ん。ありがとう。」


そう言って。扉を閉め、病院の入り口に向かう。


「どうする?追いかけるの?」

「そうね。本当の可能性もあるから、少し待ってから。」

「...うん。」



そうして。一階のロビーまで逃げる。隅の方で隠し持って来ていたスマホを取り出す。きっと今まで使ってこなかったから、僕が持っているのには気づいていないだろう。


そして、葵衣に電話をかける。


「もしもし?」

「もしも〜し。かけるくぅん。どうしたの〜。」

「...助けに来てくれ。」

「...やっとか。今すぐ向かう。かけるはあの裏切り者達に見つからないように隠れるか逃げてくれ。」

「...いい擬態だった。」

「お前が無茶なこと言ったからだろー。こっちだって必死にやってんだ。」

「あぁ。わかってる。」

「私も昔のお前の声の感じが聞けて少し嬉しい。特にその強気な喋りはな。まぁ...今度こそ失敗しないでくれ。」

「お前こそ。」


そこで通話は切れた。というより切った。


「よし...。」


体の状態を確認する。状態はとてもいい感じだ。そして昔の記憶も戻ってきた。


鬼ごっこ開始だ。

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