第6話

...焦っていた。多分、英橙えいとにも感づかれていただろう。


さっきの院長の話。葵衣あおいからの警告。聞いたことがある。というより見たことがある。


部屋に戻り、自分の荷物のノートを確認する。が、ノートはなかった。


「どうしたんですかー。」

香織かおりさん...。ううん、いや。なんでもないよ。」

「...本当に?」

「...え?」

「自分の持ち物がなくなって、それを探しているんですよね。佐藤さとう君。」

「なんでそれを...?」

「まぁ、検査中になんでも取れたんでね。」


なんで?どうして?謎だらけが頭で回らない。


そこで自分の意識は切れた。



そこで。意識は覚醒した。


「ここは...?」


刑務所のように檻があり、部屋が仕切られていた。


「噂に聞いていた、地下施設だ。」


響いた声は、どことなく、英橙えいとに似ていた。


「さぁさ。かける君。実験の時間だよ。」

「は?ということは...噂のことは本当だったってことかよ!?」


急に叫んで、咳き込む。


「あぁ。あまり変なことをしないで。そしたら本当に死ぬよ。」


死ぬ。それを聞いてあまりにも怖くなってしまった。


「うん。それでいいんだ。」

「僕をどうする気なの。」

「まあまあ。ついておいでよ。」


香織かおりさんの後ろをついていく。すると...。


「ここは...。」

「実験室兼手術室だよ。ほらほら横になって。」

「...(無言で横になる)」

「麻酔打つねー。」

「そんなに楽観的に打つ物ではな...」

「はい。打ち終わりました。先生。」


その時、意識は落ちた。



が、意識が覚醒する時、まだ手術中であった。術中の先生、つまり水町みずまち 翠弥みどりやと補助として、紫雲しうん 香織かおりが手術をしていた。


手術中、私は意識を覚醒していた。術中の先生の顔も見えるし、どんな物を持って手術をしているか見えていた。


だが、痛みは全く感じなかった。


「先生。この子どうするんですか。」

「うーん。どうしようか。」

「もう二年も経っているんですよ。」

「それもそうだが。が、二年もバレなかったんだ。噂程度に収まってくれた。」

「だからって...。」

「あまり、犠牲を出すなって?」

「...まぁ。そういうことです。」

「それも...噂程度で収まってくれている。ここに来た人達は記憶を消して出しているし、あまり心配することないと思うんだけどなぁ。」

「この子だってそうです。わざわざ二年もかかるなら、他の子を見つけた方がよかったんじゃ...。」

「まぁまぁ。次でダメなら、始末だ。」

「というか、骨ももうだめですし、筋肉もあまりありませんし。」

「一応、対応となる、薬は打っているんだがなぁ。」


とそんな声が聞こえてきた。


本当に俺をどうする気なんだ。

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