さようなら、先輩。(旧)

雨世界

1 恋をしませんか?

 さようなら、先輩。


 プロローグ


 恋をしませんか?


 本編


 さようなら、……またどこかでね。


 私が先輩に恋をしたのはある春の日のことでした。

 それは本当に偶然の恋でした。

 私は今まで、本当に人を好きになったことがなかったんだって、先輩に恋をして初めて思うことができました。

 ねえ、先輩。

 知っていますか?

 私がどれくらい先輩のことを好きだってこと。

 人を本当に好きになることが、どんなにすごいことかってこと、先輩は知っていますか? 

 ……こんなふうに思うことはとてもずるいことですか?

 先輩。

 先輩は今、誰に恋をしていますか?

 やっぱり先輩は、あの人のことが、今も大好きなんですか? 

 忘れることなんてできないくらいに好きですか?

 私が先輩を好きだって思うくらい、先輩もあの人のことが大好きなんですか?

 ねえ、先輩。

 答えてください。

 黙ってないで、ちゃんと言ってください。


 先輩は私のことをどう思っていますか?

 その答えをちゃんと私に教えてください。


 先輩。

 私は今も先輩のことが大好きです。

 先輩が私のことを好きじゃなかったとしても、……好きです。


 たぶん、一生好きです。


 先輩。

 先輩は私の初めての恋をした人でした。

 

 ある日、朝早くに生徒会室にやってきたある女子生徒が、「卒業式のあと、どうするの?」と生徒会長の女子生徒に聞くと、その女子生徒は「先輩のおうちにお邪魔することになっているの。そこで私、今日、私は学園を卒業しました。そしてこれから、先輩本当にありがとうございました。先輩は私の憧れでした。でも私は今日、学園と一緒に、先輩からも卒業しようと思います。って、先輩に伝えるつもりなんだ」とにっこりと笑ってそう言った。

 その言葉通りに女子生徒はみんなにごきげんようの挨拶をしたあとで、先輩のお家に向かった。

 学園を卒業したあと、先輩はずっとお付き合いをした幼馴染の男性と結婚をして、小さなアパートの部屋で、その男性と、一匹の猫と一緒に幸せに暮らしている、と言う噂だった。


 もう直ぐ子供も生まれるらしい。生まれてくる子は女の子なのだそうだ。


 あの美人の先輩の子供なのだから、きっととても美人の子供が生まれてくるのだろうなと、軽い足取りで、走って先輩のお家に向かっている生徒会長の女子生徒を見送っている女子生徒は笑顔で思った。


 ……先輩。


 世界には今年も、桜が満開に咲いています。


 その桜吹雪の中に、先輩との思い出が、みんなの姿が、いろいろあったけど、楽しかった思い出と一緒に、淡く、溶け込むようにして、だんだんと消えていった。


 あっという間の三年間だった。


 ……なんがかちょっとだけ、私は泣いてしまいそうになった。


「さようなら、先輩!!」

 そう泣いている後輩から元気に声をかけられて、私は泣いてしまった。


 泣いている私を見て、後輩たちはとても嬉しそうに泣きながら笑っていた。


 さようなら、先輩。 終わり 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

さようなら、先輩。(旧) 雨世界 @amesekai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ