僕は完璧主義

ジュン

第1話

「僕は完璧主義なんだ」

宮下はそう言った。

「完璧主義?どんなところが?」

サツキはそう聞いた。

「どんな課題にも通し番号をふって、定めた期限までに、課題の数と解決した課題の数が一致する、つまり、未解決な課題が0にならないと気がすまないんだ」

「ふーん。複式簿記みたい」

彼女は続けて言った。

「どうしても解決できない課題が出てきたらどうするの?」

「課題の『概念操作』をして、解決できるとみなす課題へと置き換えるんだ」

「無理やり解決させちゃうんだ」

「そう」

「でも、完璧主義って完璧じゃないんじゃないかしら?」

「なんで?」

「完璧主義には『不完全』は含まれない」

「まさに、完璧じゃないか」

「そうかしら。完璧主義には『不完全』という要素が欠けている。欠けている要素があるってことは完璧とは言えないんじゃないかしら」

彼女は続けて言う。

「本当に完璧でいたいんなら、完璧でいて、同じだけ完璧でなくもいなくちゃ、もれなく完璧とは言えないと思うわ」

「そんなことできるわけないじゃないか」

僕は声を荒げた。

「そうね。無理ね」

「…………」

「宮下くんは、土台無理のあることを言ってるのよ」

「無理のあること」

「そう。完璧主義なんて人間には無理なのよ」

「じゃあ、どうしたら……」

「完璧主義でいなさい!」

「意味わかんないよ」

「完璧主義を超越しなさい!」

「完璧主義を超越……」

「そう。完璧主義に囚われているうちは、完璧じゃないのよ。完璧主義から卒業したとき、人は完璧になるのよ。それに……」

「それに?」

「私、完璧主義者とはお付き合いできないわ。完璧主義者の信条を壊してしまうもの。だって私は平凡な人間だから」

「サツキと別れるのは嫌だ」

「『サツキと別れるのは嫌だ』っていう『課題』も『概念操作』して解決したら?」

「そんなことできないよ!」

「『できないよ』今の一言で、宮下くんは完璧主義から御卒業だね」


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僕は完璧主義 ジュン @mizukubo

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