其の五、彼らのその後

 だから、


 誰にも告げず、密かに、僕らの会社から去った。


 サラリーマンへと戻ったんだ。


 そして、


 歳をとって老いた僕は、思う。


 やっぱり、あの奇妙な記憶は、妄想だったんだ。


 と……。


 そうだ。僕の才能は器用貧乏という才能で、もう花ひらいていたんだって。今まで、色んな事に挑戦して、その道の才能在る人物達と出会えて、一緒に夢を追えて本当に楽しかったからさ。そして、僕と同じく歳をとった妻の肩を抱く。そっと優しく。


 妻は僕に微笑みかけてくれる。


 二人、揃ってTVを見つめる。


 今日は今まで出会ってきた才能在る彼らが一堂に会してインタビューを受ける日。


 その様がTVで放映される日。


 僕の今までの人生を振り返り、彼らが、どうなったかを知れる日。


 TVの中で一人一人の肩書きが紹介されていく。


 作家を一緒に目指した彼女はいまやノーベル文学賞候補になるほどの文豪らしい。


 次に出す本が、すでに話題沸騰で発売前にベストセラーが約束されているとの事。


 お笑い芸人としてコンビを組もうと思った、あのカクカクでウニョウニョは、いまや大御所。大御所になっても、お笑いの最前線で大活躍しているのだそうだ。オドオドした性格は直ったみたいだ。ただし、あの動きは健在で笑ってしまった。


 やっぱり、やつはお笑い芸人になる為に生まれてきた男だったんだと妻に耳打ち。


 そっと。


 そして、


 微笑む。


 バンドで一緒だったボーカルのあの子は歌姫と呼ばれ一世を風靡して、電撃結婚。


 結婚相手は芸能界のドンと呼ばれるような人物で、結婚後、引退。


 いまだ結婚生活は続いていて幸せそうに微笑む。


 たまに曲を作っているらしいが、それらも全てミリオンセラーだ。


 最後に。


 僕と一緒に会社を作った相棒が静かに出てきた。


 スポットライトを眩しそうに右手でさえぎり、ゆっくりと静かな所作で席につく。


 あの会社は、いまや世界にも進出して子会社が把握できないほどに増えているらしい。世界各国に在る支社も数え切れないほどらしい。そして、やつは、経営の神様が再臨したとさえ言われているらしい。やっぱり、あいつの才能は半端なかった。


 と妻に、また耳打ちして笑む。


 そして、


 厳かにインタビューが始まる。


 さて、では、集まって頂きました日本の著名人たちのインタビューへと入ります。


 準備は、よろしいでしょうか?

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