繰り返し。

黒電話。

 私の愛する諭吉を200人も失ったあの日から今日でちょうど一週間経つ。

 警察からの連絡は何もない。ただ、太郎からの連絡も無かった。

 感謝の言葉くらい聞きたいものだ。


 例によって特にすることも無いので、さっき駅前の書店で買い込んできた新刊ライトノベルを読んで一日を過ごしていた。


 どのくらいの時間が経っただろうか。すでに2本を読み終え、3冊目を手に取る。


「確かこれは、今年の新人賞だったかな・・・」


 なんだか大きなポップが付いていた覚えがある。

 さてどんな話かな、と本を開いたその時。


 ジリリリリリリリリリリリリン・・・

 ジリリリリリリリリリリリリン・・・


 約一週間ぶりに聞いた音である。


「はーい、もしもし?」

「あ、お父さん?僕だよ、太郎だよ」


 だから俺には・・・


「そろそろ次の分を納めに行かないと僕消されそうなんだけど・・・」


 この太郎はセンチュリー修理代金として、893の方から2000万円を要求されていた。

 手付けと称して先週200万円持って行ったくせに、毎週この調子で要求して来るのだろうか。

 そのうち利息とか言い出しそうで怖いところだ。


 よって今回は、私の判断で100万円を渡すと約束した。


「・・・で?」

「はい?」

「今日は事故の処理は無いんだろ?お前が来るんだよな?」

「いや・・・あの・・・」


 わかりやすい馬鹿め。のこのこやって来たら締め上げてやろうと思っていたが、向こうもそれを察知したのか、仕事が・・・などと言って来ないつもりらしかった。


「・・・わかった。じゃあまた駅前の喫茶にこの前と同じように、前とは違う部下が来るんだね?」

「そう。」


 わかった、と返事をして電話を置く。

 すると、30秒もしないうちにまた黒電話が鳴る。


「はい、もしもし」

「あ、わたくし警視庁特殊詐欺対策科の・・・」

「どうもお世話様です」

「もしかすると奴ら、そろそろ追加を要求して来ると思われますのでご注意下さい」

「あ、それなんですが・・・もう来ました。さっき」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る