第32話 見つけた彼女と叩かれたケツと二進数
「デカいなー……」
「高いわねー……」
俺とドンショクちゃんは、大きい教会を上へと眺めながら呟いていた。
全体が長方形で一部だけ更に高くなっており、その部分には年季の入ったステンドグラスがはめられている。かつては何かの宗教で使われていたんだろうか。
流石におおっぴらに見てると暴徒達に見つかりそうなので、近くの茂みから覗いている状態なのだが。
「……ねえ。教会の上にいるのって」
すると、ショータロー君が指を差した。古びた教会の屋根の上を差したその先には、
「ステータスちゃんッ!?」
「おばさんッ!」
ピンク色の長い髪の毛を風になびかせている長身の女性、ステータスちゃんの姿があった。屋根の上で、ステンドグラスに背を預けているのがよく見える。
「……なんであんなとこにステータスちゃんが?」
「……もしかして。今回の騒動におばさんも関係してる訳?」
暴徒達が向かっていたその目的地の天辺にいるステータスちゃん。うん、何か変な疑いが芽生えてくるが、
「……にしては、何か様子がおかしいね」
「……だな」
ショータロー君が首を捻っているが、俺もそう思う。遠くて微妙にしか見えないが、何となく、フーハッハァッ! 愚民どもよ崇め奉れェッ! 的なテンションでは無さそうなのは解る。
どっちかと言うと、何かを考え込んでいるような……?
「……んで。結局どーすんだよ?」
「うーん……おばさんも気になるけど、あの中も気になるのよねー……」
ドンショクちゃんが下に目をやる。暴徒達が続々と足を踏み入れている、教会の中。確かにあっちも気になるな。
「……よし。ここは手分けしようか」
ポン、っと右の握り拳を左手の手のひらに叩いたショータロー君。手分け、とな。
「うん。ぼくとドンショクさんで下を調べてみるから、ハヤトさんはステータスさんをお願いするよ」
なるほど。気になるなら両方行けば良いと。道理だな。幸い人手も足りてるし。
「……でも、どーやって?」
だが具体的な方法が解らん。彼女がいるのは、たっかい屋根の上だ。下で暴徒達が蠢いている中、梯子とかで教会の壁をよじ登るのは、ちと無理がある。
そうなると内側から上の階に行って、何処かの窓から屋根へと出て行く事が現実的だが、そこでも暴徒達が邪魔をしてくるだろう。どんな方法を取るにしろ、一筋縄では行かなさそうだ。
「簡単だよ。ドンショクさんも手伝ってくれないかい?」
そう言ったショータロー君が、ハリセンを構える、えっ、何そのハリセン。
「……なーるほどね。"悪食(イートワールド)"ッ!」
ついでにドンショクちゃんも、何かを察して触手を出している、ちょっと待って、何で二人とも振りかぶってんの? 野球? 野球なの?
「ぼくのハリセンと……」
「あたしの触手で……」
「「屋根の上までふっ飛ばしてあげるよ(わ)」」
「ウッソだろお前」
「「ホンマです貴様」」
一筋縄ではいかないと思ってたら、まさかの力技、いやおい、そんな事ある? 現実的な方法考えてた俺の方が馬鹿みたいなんだけど。
「……ちなみに成功の確率は?」
「そんな細かい事は良いのよ」
「ちょっとシリアスな感じが続いてたからさ。この辺で気圧を馬鹿の空気まで落とさないと、息切れしちゃうじゃん」
びっくりするくらい答えになってないんだけど。あと少年。それは何処への配慮だおい。
「はいッ! じゃ、行くよドンショクさんッ! カウント10、1」
「ゼロォォォッ!!!」
「二進数だコレェェェッ!!!」
ツッコミも虚しく、俺の桃尻にハリセンと触手が振われた尋常じゃない二つの衝撃が脳天まで響き渡る二重奏ゥゥゥッ!?
「ァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?」
明日の俺は痔になっている。そんな嫌な確信を持ちながら、俺はケツをしばかれて宙を舞った。
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