第28話 おっぱいウザギとタイ●ニックと私達は戻ってくる


「オイラの名前はウサタロウッ! 好物は人間のメスのおっぱいさッ! よろしくねお姉さん、早速だけどその豊満なおっぱいしゃぶらせてもう我慢できんぞウッサァ!!!」


 おっぱいウサギ、もといウサタロウが舌なめずりをしながらステータスちゃんに飛びかかっていく。それに対してステータスちゃんは、凄く難しい顔をしていた。


「うーん……ショタとも言えなくもないこのウサギ、どうしましょうか……? ショタっぽいっちゃショタなんですけど、どっちかっていうとガキって感じですし、理想はやっぱりショータローきゅんみたいな純粋そうなタイプが……そもそもウサギとなんて、ニッチな感じもしますし……」


「ものすごくどうでも良い葛藤だ……」


 ショータロー君の冷めた一言が的を得ていて笑えてくるが、笑ってるとガチホモにケツを掘られるので俺は必死です。まだ捕まってはいない、まだ。


「いーじゃないお姉さんッ! オイラの舌で満足させてやるぜウッサァッ!!!」


「う~~~~~~~~~~~~~~ん………………………やっぱ無しで」


 めっちゃ唸っていたステータスちゃんだが、やがてその姿を消した。


「ウッサァッ!? ど、どこに消えたのお姉さんッ!?」


『実体化を解いただけですよ? わたしは一応、相山のステータスちゃんですので』


 いつの間にか俺の頭の中に戻っているステータスちゃん。しかし声が頭の中ではなく耳から聞こえているので、おそらくあのウサタロウ達にも聞こえているのだろう。


「ウッサァァァッ!!! そんな恥ずかしがらなくても良いじゃないのお姉さんッ!?!?」


『やっぱり妥協は良くないかな、と思いまして』


「妥協って何ッ!? オイラの何処が駄目なんだよウッサァッ!?」


『なんか、違うなって……』


 あっ、この反応、本当に琴線に触れなかったやつだ。悪くはないけど選ぶほどでもないってゆー、こう、なんて言うか……ごめん、って感じ?


『……って言うか相山、いつまで遊んでるんですか。さっさと捕まえてくださいよ』


「おれの君ィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!」


「逃げなきゃ掘られるのォォォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」


 何サボってんだみたいな言葉だが、俺は今、ケツの平和を守るための逃走中なのだ。こちとら必死の必死なんだっつーの。


「待ってよお嬢ちゃんッ! 大丈夫よッ、アタシ慣れてるからッ!!!」


「いぃぃぃやぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」


 ドンショクちゃんも必死だ。彼女に至っては、逃げながら泣いていた。ガチ泣きに近いやつ。強く生きて。俺も頑張るからさ。


『だから。筋力値を上げる以外にもスキルをあげたじゃないですか。早くそれ使ってくださいよ』


「す、スキル……ッ?」


『氏名:相山ハヤト

 性別:男性

 年齢:二十八歳

 状態:葉っぱ隊

 職業:ロリコン

 取得スキル:ステータスちゃん、カッチカチやぞッ!(New!!!)

 持ち物:五百万円の借金(ちょっと減った)

 備考:ちゃんとステータスちゃんを見ましょう。プンプンですよ(New!!!)』


 再度表示された俺のステータスには、確かにスキル欄に新しいものが入っていた。てっきりこれは俺の筋力値を上げるスキルだと思っていたが、どうやら違うらしい。


 つーか、そろそろスキルの説明欄が欲しい。ステータスちゃんがノリで命名してるスキル名だけじゃ、何のスキルなのかが全然解らん。


 あと備考に書いてあるステータスちゃんのコメントが、絶妙にイラッとくる。プンプンじゃねーよ、プンプンじゃ。


「ああもう、こうなりゃヤケだッ! スキル発動ッ! [カッチカチやぞッ!]」


 半ばヤケクソ気味に俺はスキルを使った。すると俺を追ってきていたゼンザブロウが、ピタリ、と動きを止めた。


「は……?」


「な、なんだこのスキルはッ!? お、おれの身体が、筋肉達が動かんッ!?」


『それは、相手の動きを静止させるスキルですよ』


 呆気にとられる俺に、シレッと説明するステータスちゃん。お願いだからもうちっと解りやすいスキル名にして。今のところボブ以外、マジでどんな効果があるのか検討もつかなかったから。


「……んなら、お前もッ!」


「あンッ! う、動けないわ……ッ!?」


「お前もォォォッ!」


「ウッサァッ!? か、身体が言うこと聞かなゴボゴボゴボゴボ……」


 俺は立て続けにスキルを放ち、シャララとウサタロウの動きも止めた。あっ、足がつかないウサギが溺れてる。


「た、助かったぁぁぁ……」


「し、死ぬかと思った……」


 それを見たドンショクちゃんと俺は、一息を入れる。マジで恐ろしい相手だった。


 一歩間違えば全年齢版の看板をゴミ箱にダンクして、R18タグを用意しなければならなかっただろう。


「さて、と。取られた水着も全部回収できたし……この人たち、どうするの?」


「そうですね……では、こうしましょうか」


 さっさと水着を回収しているショータロー君と、再び実体化したステータスちゃんがこちらに集まってきて、ゴニョゴニョとお話する。


 彼女の話はなんかこう、あれだったが、うん、もう、面倒だからそれで良いや……。


 話を聞いた俺達は固まっているシャララとゼンザブロウ、そして溺れていたウサタロウを持ち上げると、彼らを水上バイクに乗せた。


「……人に好意を向けることは、間違いではありません」


 俺とドンショクちゃんがこいつらを水上バイクに乗せている間に、ステータスちゃんが何やら話し始める。


「誰かを好きになることは、素晴らしいことです。好きだと言ってもらえて、悪い気がする人はなかなかいないでしょう。しかし、好きが独りよがりになってしまっては、いけません。自分が好きだから相手に何をしても良い。自分が好きだから相手も自分を好きになるべきだ……なんて考えは、間違っています」


「今日のお前が言うなの会場はここかい?」


 被害者の一人であるハリセンを持った幼い少年が、首を傾げている。多分ここで合ってるぞ。


「……まずは好意を伝えて、その上で相手を尊重しましょう。自分と、相手と。相手は決して自分に都合の良い人形なんかではなく、血の通った生き物です。それを、忘れないでください……」


 ステータスちゃんが何か言っている間に、俺達は彼らを水上バイクに乗せ終わった。


 中央にゼンザブロウを立たせ、両腕を真っ直ぐ横に伸ばし、手のひらを前に向ける。その後ろにシャララを置き、両手で彼のブーメランパンツを限界まで左右に引っ張らせた。


 残ったウサタロウはゼンザブロウのブーメランパンツのもっこりの部分に差し込んで、その両手をアクセルへと添える。完成だ。


「「「ってなんじゃこの格好はァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」」」


 シャーデンフロイデの三人が叫んでいる。これはタイタ●ックだな。


 ちょっと原作と違う気がするけど、おそらくは無視できる範囲だ。感動的だぞ。泣けよ。


「……よし、エンジンもかかったわね。変態、よろしく」


「おうよ」


 ドンショクちゃんの声に乗じて俺は彼らに向けて手を真っ直ぐに向けた。


「……じゃあな、変態ども。スキル発動ッ! [カッチカチやぞッ!]」


 そうして俺はスキルを発動させ、彼らの動きを再度静止させた。同時に、ドンショクちゃんがウサタロウの手でアクセルを握らせて、手を離す。


 すると、アクセルがウサタロウによって握りっぱなしとなった水上バイクは勢いよく動き出し、彼らを乗せて沖へと向かっていった。


「「「ぎゃぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!! 目がッ、目がァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」」」


「あっ。あとついでにまぶたの動きも静止させておいたから、ゆっくりと景色を楽しんでってくれ。俺からの、ほんの心ばかりのサービスだ」


 風を切る中で目が開きっぱなしになっているという、彼らの痛みは如何ほどだろうか…………想像したくもないな。


「「「アイル・ビー・バァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアックッ!!!」」」


 やがて彼らの姿は、声と共に小さくなっていく。それタイ●ニックじゃなくてター●ネーターじゃね?


 俺達はそんな後ろ姿を見て、誰一人として手を振ってはいなかった。二度と来んな。

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