第16話 臭いとボブとレッツダンシング!
「変態とは失礼なッ! 俺は十三歳以下の女の子を愛するただの紳士だッ!」
「しかもロリコンだぁぁぁあああああああああああああああああああああああああ嫌ぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああッ!!!」
ドンショクちゃんの悲鳴が加速した。女心は解らん。
「"悪食(イートワールド)"ォッ!!!」
すると彼女の背後から無数の触手が蠢き、俺に向かって襲いかかってきた。
「ステータスちゃんッ!」
「お任せですッ!」
俺は自分のステータスちゃんを呼んだ。ふふん、俺の能力値やスキルはステータスちゃんによってどうとでもなるのだ。あんな触手なんざ、余裕のよっちゃんヨチの助よ。
やがて自分の目の前に現れたステータス画面を、俺はゆっくりと確認した。
『氏名:相山ハヤト
性別:男性
年齢:二十八歳
状態:うわクッサ(New!!!)
職業:ロリコン
取得スキル:ステータスちゃん
持ち物:五百万円の借金(ちょっと減った)
備考:今月の給料、なし』
俺に襲いかかろうとしていたドンショクちゃんの触手達が、目の前でピタっと止まった。そして恐る恐る、引き下がっていく。
「臭ァッ!? クッサァッ!!? カメムシみたいな臭いがする……オエッ」
「テメー何してくれてんだゴルァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
ドンショクちゃんが信じられないものを見る目でこちらを見ながら鼻をつまんでいるが、でも今はそんなことどうでも良いんだやってくれたなあのクソアマァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!
「あっはっはっはっはっはっはっはっはッ! 臭い、臭過ぎるッ! この距離でも臭ってきてるとかゴホッ、ゴホッ、お、オエェェェ……」
「何で自爆してんのこの人? あっ、ハヤトさん、もう少し向こう行ってもらえます? 服に臭いがつくと面倒なんで……」
笑った挙げ句に自分も臭いに耐えきれなくて嘔吐を始めている駄目ステータスちゃんと、鼻をつまんだまま他人行儀で俺と距離を取り始めたあのクソガキ。
「……やっぱ変態って臭いんだ……」
「何納得してんだこのデブッ!!!」
ドンショクちゃんが頷いているが、俺は悪くねえ。悪いのはあのクソステータスちゃんだ、絶許。
少しして状態が元に戻ったのか、臭いもやがてなくなっていった……さあて! 気を取り直して第二ラウンドだッ!
「ぶっちゃけもうアンタに近寄りたくもないんだけど……あたしの事をデブ呼ばわりした事は許してないんだからねッ! "悪食(イートワールド)"ッ!」
再度、俺の元に触手が襲いかかってくる。
「ステータスちゃんッ!」
「お任せですッ!」
俺は自分のステータスちゃんを呼んだ。ふふん、俺の能力値やスキルはステータスちゃんによって以下略。
やがて自分の目の前に現れたステータス画面を、俺はもう一度確認した。
『氏名:相山ハヤト
性別:男性
年齢:二十八歳
状態:フローラルの香り(New!!!)
職業:ロリコン
取得スキル:ステータスちゃん
持ち物:五百万円の借金(ちょっと減った)
備考:今月の給料、なし』
俺に襲いかかろうとしていたドンショクちゃんの触手達が、また目の前でピタっと止まった。そして、恐る恐る引き下がっていく。
「……変態からお花みたいな良い匂いしてるとか逆にキモイ……」
「人で遊んでんじゃねーぞテメーゴルァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
「あっはっはっはっはっはっはっはっはッ! 臭くても良い匂いでもやっぱキモイですよ相山ァベブアァァァッ!?!?」
「真面目にやりなよ」
高笑いしているステータスちゃんの頭に、ショータロー君のハリセンがクリーンヒットした。ナイス一撃。
「……仕方ありませんね。ほらよ相山、スキルですよー」
叩かれた頭を擦りつつ、ステータスちゃんが渋々といった様子で新しい画面を出してくれるんだけど、何あの態度ムカつく。
『氏名:相山ハヤト
性別:男性
年齢:二十八歳
状態:葉っぱ隊
職業:ロリコン
取得スキル:ステータスちゃん、ブートキャンプは楽しいゾ!(New!!!)
持ち物:五百万円の借金(ちょっと減った)
備考:今月の給料、なし』
「……ほほう?」
表示されたステータス画面では、スキルの欄に一つ追加されていた。そのスキル名を見た俺は彼女の意図を察し、ニヤリと笑う。
「……おい。ドンショクちゃん、だっけ?」
「な、なによ変態……?」
俺はそのままドンショクはちゃんを見やった。って言うか変態ってなんだ俺は紳士だぞ? 解せぬ。
「ハヤトさんの思考回路の方がよっぽど解せないよ」
クソガキがうるさいが無視だ無視。
「お前、ダイエットの為に村人に野菜作らせてんだってな?」
「そうよ、悪いッ!? 買い占めた分だけじゃ足りなかったのよッ!」
「自分で運動しようとは思わないのか?」
「ハァ? 何で運動なんかしなくちゃいけないのよ? 食べて痩せられる食べ物があるなら、それを食べた方が楽じゃない。馬鹿じゃないの?」
なるほどなるほど。まあ、言わんとすることも解らなくはない。楽できる手段があるなら、そっちをやるに越したことはない。
自分がやりたくもないと思っている嫌な事をやるよりは、よっぽど精神的にも良いだろう。我慢してやっても、何処かで反動が来てリバウンド、なんて事もあるしな。
「……だけど、村人を無理やり働かせて、自分だけ楽しようなんて魂胆は許せん。大体、俺が借金地獄でロクに飯も食えてないってのに、自分は暴力にものを言わせてタダで飯食ってるとか、なお許せん」
「最後ってアンタの私怨じゃないのッ!?」
ドンショクちゃんが何か言っているが、まあそれは置いておいて、だ。
「……つべこべ言わず、何かしたいならまずは自分で頑張れって事だッ! スキル発動ッ! [ブートキャンプは楽しいゾ!]」
俺は手をドンショクちゃんに向けて突き出し、スキルを発動させた。すると何処からともなく、軽快な音楽が鳴り響いてくる。
「な、何よこの音ッ!? あ、アンタ一体何のスキルを……」
「やあ! 君が今日の受講生かな?」
びっくりしているドンショクちゃんの隣にいつの間にか、身長が二メートル近くある褐色肌の筋肉ダルマがいた。爽やかな笑みを浮かべており、頭部はツルツルのスキンヘッド、はい、ハゲもう一丁入りまーす。
分厚い唇とつぶらな目を持っていて、そんな様子を見た俺達は、自己紹介されずとも彼の名前が解った。
「ボブだな」
「ボブですね」
「ボブだね」
「ボブ違うッ! 僕は田中カンベエだッ!!!」
良いんだよボブ、無理しなくても。俺達は皆、君の事解ってるから。
「解ってないよね! 思いっきり僕の名前決めつけてるよねェッ! クソァッ! この見た目に加えて筋トレと日焼けサロンが趣味ってだけで、誰も彼も僕の事をボブボブ呼びやがってェッ!!!」
やっぱりボブじゃないか。
「この件については後でゆっくり話させてもらうよ……とりあえず、君が今日の受講生だね、お嬢さん?」
「な、何よこのボブ……あたし、何にも受講なんて……」
「遠慮することはないッ! 君のそのだらしない身体だって、僕と一緒にトレーニングしたらすぐに引き締まるさッ! レッツブートキャンプッ!!!」
そうしてボブが声を上げると、いつの間にか半袖にスパッツ姿のトレーニング衣装に身を包んだ男女四名が、ドンショクちゃんの周りに集まっていた。
全員、白人っぽい彫りの深い顔に金髪や茶髪、そして何故か良い笑顔をしている何あれ怖い。
「ナンシー、ロバート、ミランダにジョン。みんな揃ったみたいだね」
「カオリです」
「マサアキです」
「ハナコです」
「タロウです」
「君たち本当にちゃんと自己紹介したのかい?」
ショータロー君の冷めたツッコミが光る。おいボブ、誰一人名前合ってねーじゃねーか。
「さあ! 細かいことは置いておいて、トレーニングを始めよう! ブートキャンプは楽しいゾ!」
「「「「レッツダンシングッ!!!!」」」」
「えっ、ちょ、ええええええええええええええええええええええええええええッ!!?」
やがて音楽に合わせて彼らが踊りだした。どっからかライトも照らされていて、ここ屋外なのになんか凄く華やかなステージになっている。
そんな彼らに合わせて、ドンショクちゃんも身体を動かしていた。
「な、何よこのスキルッ!? 身体が勝手に……」
「それは対象を強制的にブートキャンプさせるスキルです」
焦るドンショクちゃんに向かって、ステータスちゃんが説明する。
「痩せたいなら、まずは自分で頑張りましょう。先ほど相山も言っておりましたが、自分が楽したいからって誰かに無理させるなんていけません。貴女ももう十六歳なんでしょう? そろそろ、ワガママは慎むべきです」
「自分の性癖を慎まない君がどの口でそれを言うのさ?」
幼い彼のツッコミに同意しかない。確かーに。
「……とにかく! 美しさの道は努力の道です! わたしだってスキンケアにストレッチにムダ毛処理にパチンコに……日頃色々頑張ってるんですよッ!? 若い時から楽を覚えてはいけませんッ! 自分でやる事を、忘れないでくださいッ!」
パチンコって美容効果あんの?
「……つーかもしかして、ステータスちゃんって結構な年増あふひばァァァッ!?!?」
痛ァッ!? 頸動脈にステータスちゃんの的確なチョップが見舞われて痛覚が盛大な悲鳴をォォォッ!!!
「女性の年齢を追求するなんて、本当に相山は失礼ですね」
「今のは君が悪いよ、ハヤトさん。女心は複雑なんだから」
「お前一体いくつだこのクソガキャァッ!?」
十歳でどんな経験してきたらこんなショタが生まれるの? 教えてエロい人。
「さあ! トレーニングはまだまだだよッ! オイッチニー、サンシッ!」
「嫌ぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああ誰か止めてぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!!」
そんな俺達の背後では、ドンショクちゃんがボブによる強制ブートキャンプの刑に処されていた。
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