第10話 ラインとGOタッチとお義父さん
「……なんだあれ?」
「……さあ?」
俺とステータスちゃんが洞窟を奥へと進んでいくと、何故か行き止まりになっていた。
いや、洞窟なんだから行き止まりでもおかしくはない。問題はその行き止まりの所に、一つのドアがついている事だ。
「ここってただの洞窟じゃねーの? 何でドアなんかあるんだよ?」
「だから知りませんって。つべこべ言うくらいなら、入ってみたら良いんじゃないですか?」
「それもそうか」
ここであーだこーだ言ってても仕方ないので、俺はドアノブを回して開けて見た。
そうして俺の目に飛び込んできたのは……機械が動いて何かを作り、それをベルトコンベアーで流して次の場所に運び、各作業員と思われる大勢の人間が疲れた顔をしてそれを点検しているという、工場のラインだった。
「……ラインだな」
「……ラインですね」
うん、ラインだ。何で洞窟の中に工場があるのとか、そもそも魔王様バンザイって書かれた薄っぺらいあれ何作ってんのとか、それ以外は全く解らん。
「……新人か」
呆然としていたら、やがて声をかけられた。
声のする方を振り返って見ると、そこには紺色のスーツに身を包み、紫の肌に口から飛び出した牙、彫りの深い顔つき。
その他には角、翼、蹄、尻尾を持った典型的なデーモンみたいな生物が立っていたよっしゃ異世界っぽいのキタァァァッでもスーツはやめてなんか合わないッ!
「……新人? 誰がですか?」
「お前らだろうが、女に全裸」
「誰が全裸だこの葉っぱが目に入らぬかァッ!?」
「むしろ目に入れたくないんだが?」
チッ、このデーモンっぽい奴の目は節穴か。どうして俺のクラシカル紳士スタイルが受け入れられないんだ全く世界は敵色だ。
「いいえ? わたし達は新人なんかじゃないですよ。ラッチさんに頼まれて、洞窟の見回りに来ただけです」
「そうか、お前らはラッチの紹介か」
紹介って何? 紹介された覚えないんだけど。
「じゃあ、とりあえずやる事をやろうか……フハハハッ! 騙されたな愚かな人間めッ! 我が名はアークデーモンッ! 役職は係長だッ! 奴は我々の協力者よォッ! ここは魔王様の栄光を称える魔王様ステッカーの生産工場だッ! 騙されたお前らここで一生働く運命となったんだよッ! ……と、言う訳だ」
途中のテンションは素晴らしいんだけど、頭と終わりのセリフの所為で色々と台無しなんですが。
つーかと言う訳って何? ステータスちゃんと顔を見合わせると、一度状況を整理することにした。
まず、俺らはラッチさんの手伝いに来た筈だったが、それは嘘だった訳で。騙されて連れて来られたここは魔王軍のステッカー工場で、俺たちはここで一生働かされる運命だと。
そう言う事か、なるほどなるほど。二人で情報を整理して、納得し合う。
「……ああんのハゲェェェッ!!!」
「騙したんですねッ! わたしを騙してくれたのですねあのツルッパゲ頭ァッ! 土下座ですッ! 土下座させないと気が済みませんッ!」
「……アイツは口が下手だから、誰かを連れて来たのなんか初めてなんだが……お前らよく騙されたな」
憤慨する俺達を冷めた目で見ているアークデーモン係長だが、んな事ぁどうでも良い。あのハゲに拳を叩き込まんと俺も気が済まない行くぞステータスちゃん。
「もちろんです。筋力の数値ならお任せください」
「海が割れる値で頼む」
「ガッテン承知の助です」
「いやいや待て待て」
俺達が復讐を胸にあのハゲをぶちのめしてやろうと息巻いていたら、アークデーモン係長に道を塞がれた。何だよ、まだ何か用なのかよ?
「仮にもここに来た人間は全て我が工場で働いてもらうことが規定で決められている。悪いがお前達を帰す訳にはいかない」
知らねーよんなことっつーか規定で決められているって部分が社畜時代を思い出してキツイ。どこの世界でも下っ端は規則に縛られているところとか最高に世知辛い。
「……おとーさんがんばえーッ!」
すると少し遠くから幼い女の子の声がしたよっしゃキタコレロリの声じゃーァァァッ!!!
息を荒くした俺が声のする方をバッと振り向くと、そこには水色の幼稚園児なんかが着るスモックに身を包み、悪魔の羽と尻尾を持った黒髪赤瞳の幼い女の子が無邪気な笑顔で手を振っていてもう我慢できん俺の息子はギンギンだぜッ!
「YESロリコン、GOタッチ!! LET’SGO幼女ォォォッ!!!」
俺は股間の葉っぱを膨らませながら跳び上がり、空中で由緒正しき男性が女の子へと飛び込むスタイルである両手両足でひし形を作る姿勢、俗にいうルパ●ダイブで幼女へと飛びかかる。
さあ、俺 の 子 を 産 めブヘラァァァッ!?
「はーい、未成年者へのお触りは法律で禁じられておりまーすッ!」
「年端も行かぬ人の娘に何しようとしとるか貴様ァァァッッ!!!」
痛ァァァッ!!! 顔面にステータスちゃんとアークデーモン係長のダブルパンチが刺さって俺の美しい顔がァァァッ!!!
「大丈夫ですよ相山。貴方の顔は、美しくなんかありません」
「それフォローじゃなくて追い打ちだ畜生ァッ!!!」
顔を抑えて悶え苦しむ俺に言葉の刃を突き立ててご満悦のステータスちゃんを、どうしてくれよう、ホトトギス。よし殺そう。
「きゃー! おとーさんかっこいー!」
「そうでちょぉきゃわい~娘でちゅね~、せっかく職場見学に来てくれたんでちゅから、パパのカッコ良いとこをいっぱい見ててね~ッ!」
「うんッ!」
いかつい顔をデレデレに崩して娘に手を振っているアークデーモン係長だが、そんなことはどうでも良い。
彼の娘という至高の天使、いや、種族的には小悪魔ですね、俺のハートも奪われちゃいましたよこのぉ、カワイイ顔してやってくれたな君はァ。
俺は速攻で手と膝を床につき、アークデーモン係長……いや、
「お義父さん。娘さんを俺にくださいッ!」
「誰が葉っぱ一枚の変態なんざにやるかっつーか貴様にお義父さんと呼ばれる筋合いはないわァァァッ!!!」
綺麗な土下座をかましたというのに、お義父さんに速攻で拒否されてしまった。解せぬ。
「そんなッ! 俺の何がいけないと言うのですかッ!?」
「一から十まで全部だたわけがァッ!!!」
おかしい。何故全てが駄目等と即答されているんだ? 今までの行動と今の格好を振り返ってみても、さっぱり解らない。
「……わかりました。こうなったら俺の実力を示したら良いのですね、お義父さん」
「だからお義父さんと呼ぶなと言っておるだろうがッ!!!」
こうなったら致し方なしタカシ。俺の実力を示してお義父さんに認めてもらうしかない。父親超えは息子の役割だ。俺がデキる男だと言うことを、骨の髄まで刻んでやろう。
「細胞レベルで断るッ!」
「いけないなお義父さん。血圧が高いんじゃないか? 少しは身体を労らないと娘さんが心配しますよ? フッ……また俺の優しさが漏れてしまったか……さり気ない気遣いができる男アピール、オッケイッ!」
「もう良い解った、この男は何も言わずに殴り飛ばすのが正解なタイプだな、そこになおれブチのめしてやる」
「おとーさん、あのにんげんなんでふくきてないの?」
「シッ! 見ちゃいけません!」
お義父さんもやる気だ。負けられない戦いがここにある。俺にできる全てをぶつけて……必ずあの幼女を孕ませるッ! 無知ックスでなッ!!!
「誰か武器を持ってこい。なるべく苦痛が残りやすくて残酷に殺せるタイプのヤツ」
「つー訳でステータスちゃん。俺の各種能力アップヨロ」
「え、嫌です」
「ウッソだろお前」
「ホンマです貴様」
向こうでお義父さんが何やら用意している中で、俺は何故かステータスちゃんに断られていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます