第6話 家族の再会と保証人と借金


「……ただいま。帰ったぞ、カイル」


「ッ! おとうさん、おかあさん……ッ!」


「ごめんねカイルちゃん……今、帰ったわよ」


「う、うわーんッ!!!」


 感動の家族の再会を、俺とステータスちゃん、そしてカールのおっさんと黒服の皆さんが遠目に見ている。


 泣いているカイル君を見る限り、やはり寂しかったようだ。


「……大丈夫、だよな?」


「……さあ?」


 俺のその言葉に、ステータスちゃんは素っ気なく答える。


 彼女が出してくれた俺のステータスには、スキルの欄が更新されていた。


『氏名:相山ハヤト

 性別:男性

 年齢:二十八歳

 状態:葉っぱ隊

 職業:ロリコン

 取得スキル:ステータスちゃん おれはしょうきにもどった!(New!!!)』


「追加したこのスキルは自分の過ちに気づき、そして改心するスキルです。これでカイルきゅんのご両親は正気に戻りました……けど」


「けど?」


「正気に戻ったからと言って、再発の可能性はあります。ギャンブルが楽しいものだと思ってしまった事を心は忘れていないでしょう。いけないいけないと思いつつも、何かの拍子にまたやり始めてしまう可能性は、十分にあります……」


「……良いのかよ、そんなんで?」


「…………信じましょう」


 ステータスちゃんの顔は真剣だった。


「スキルでギャンブルそのものを忘れさせても良いのですが……正直、人の意識を弄るようなことは……あまり、やりたくありません。手を貸すのは、背中を押すのは、最初の一歩だけ。後は彼らがカイルきゅんの親であることを自覚し、そしてギャンブルの誘惑がきてなお、それを跳ね返せるだけの気概を持ってくれると……一個人であれ、人間は自分の足で立てると……立ち直ってくれるとッ!

 ……わたしは、信じています……」


「ステータス、ちゃん……?」


 そう言うと、ステータスちゃんは両手を合わせ、目を閉じる。


「……どうか彼らの未来が幸多きものでありますように……」


 祈りを捧げるその姿は、初めて登場した時のように神々しいものであった。まるでどっかの女神様みたいだ。


「……そうだな」


 俺も両手を合わせて祈ることにした。


「どうかカイル君に幸せがありますように……」


「……ま。あの坊やが真っ直ぐ育つのかは、今後のあいつらの頑張り次第って事で。ウチは客が減って悲しいとこなんやが」


 俺達の間にカールのおっさんが入ってきた。


「しっかしお前さんらが借金の肩代わりまでするとはなぁ。そこまでするたぁ思ってなかったわ」


 これも提案の内の一つだ。流石に借金を残したままは帰せないというカールのおっさんの言葉もあり、仕方なく俺らが持つことにしたんだ。


「いくらか目減りしましたが、先ほど大勝ちしたお金がありますので、その辺りも抜かりありません。カイルきゅんの為なら、あぶく銭くらいくれてやりますよ」


 ま、それもコイツがお金ならあるって言うからだけどな。何故か俺まで保証人として契約させられたのだけは納得いかなかったが、まあそういう書類なんだから仕方がない。


「そかそか。ま、こっちはもらえるもんもらえりゃ、何でもいいけどな。んじゃ、払ってもらおうか」


 そう言ってカールのおっさんが手を出しました。


「五百万円」


「「        」」


 俺達は揃って口を開けた。つーか空いた口が塞がらない。コイツ今なんつった?


「「ワンモア」」


「五百万円」


「「ウッソだろお前ェッ!?」」


 ステータスちゃんとハモってしまったがそれどころではないえっちょっと待って五百万円っていくら?


「なんやお兄さんら、契約書に書いてあったじゃん。見てなかったの?」


 二人して急いで契約書を見直すと、そこには一、十、百、千、万……。


「五百、万円……ステータスちゃん。さっきパチンコでいくら勝った?」


「……さっきまではもう少しありましたが、負けた分もあって今は八万くらいしか……」


 全然足りねーじゃねーかッ!!!


「んだコラァッ! 自信満々に金ならあるって言っといてなんだよその体たらくはァッ!!!」


「ううううるさいですよ相山の分際でッ!!! 貴方こそ、ちゃんと契約書読んだのですかッ!? その歳で数字の桁も見れないとか恥ずかしいことこの上ありませんッ!!!」


「読んでなかったのはテメーも同罪だろーがァッ!!!」


「テメー!? 今またわたしの事テメーって言いましたねっ!? 土下座しなさい土下座ァッ!!!」


「……楽しそうなところワリーんだけどよぉ」


 気がつくと。俺達は黒服のお兄さん達に周りを囲まれていた。逃げ場はない。


「……借金肩代わりしといて、まさか払えないとか言わねーよなぁ、お兄さん達?」


「「…………」」


「…………じゃ」


「おい待て逃げんなステータスちゃんんんんッ!!!」


 実体化を解いたステータスちゃんがいなくなり、俺は一人で黒服のお兄さん達に囲まれることになった。


「……連れてけ。コイツは保証人だ。借金全額返すまでは逃さんぞ、お兄さん」


「なんで俺がこんな目に遭うんじゃぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」


 こうして俺はしばらくの間、借金返済の為にカールのおっさんの組の下で働くことになった畜生覚えてろよこのステータスちゃんいつか絶対に殺してやるからなぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!


『氏名:相山ハヤト

 性別:男性

 年齢:二十八歳

 状態:葉っぱ隊

 職業:ロリコン

 取得スキル:ステータスちゃん

 持ち物:五百万円の借金(New!!!)』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る