第3話 ショタコンとスキルと一枚の葉っぱ
ふと視線を落としてみると、手に野菜みたいな植物を抱えた幼い男の子が、不思議そうな顔をしてこちらを見上げている。
男の子かよ、チッ……でも、なんだか可愛らしい見た目してるな。
金色の髪の毛に大きな金色の瞳。真っ白い肌を持ち、幼さが残る顔立ちは一瞬女の子とも錯覚しそうでいやこれはこれでアリかも……。
「んま~~~~ッ! 可愛らしいぼくちゃんでちゅね~ッ! お名前は、なんて言うのかな~?」
っと思っていたらステータスちゃんがいきなり猫撫で声を出してきたうわなにコイツキモ……。
「ぼく? ぼくカイルッ!」
「あらあらあらあらッ! ちゃんと自己紹介できてエライね~カイルきゅんは駄目だもう我慢できんムッハーッ!!!」
「うわっ! お、お、おねーちゃん何するのッ!?」
気がつくと。ステータスちゃんが男の子、カイル君に近づいて勝手に抱き上げると、至福の表情で頬ずりしている。
「ど~ちたのかな~? こんな変態ロリコン性犯罪者よりも、おねえちゃんとイチャイチャしようね~?」
「い、痛! 痛いよおねーちゃんッ!」
ギューッと抱きしめている所為か、カイル君が悲鳴を上げている。
あと誰が変態ロリコン性犯罪者だ。三分の一しか合ってねーじゃねーか。
「ああっ! ごめんね~カイルきゅん。いたいのいたいの飛んでけ~!」
「ぼく子どもじゃないもんッ! そんなことされなくても泣かないもん!」
「あああっ! この背伸びしてる感じが最ッ高ッ! 天使ッ!!!」
遂には鼻血出し始めたんだけどこのステータスちゃん。ボタボタ流れている鼻血で砂浜が赤く染まっているうわこいつショタコンかよ……。
「……それで、おじさんとおねーちゃんは何してるの? おじさん、服はどうしたの?」
「いやねカイル君。俺、おじさんなんて言われる歳じゃな……ってあれ!? 俺の服はッ!?」
ふと見てみると、先ほどまで砂浜で乾かしていた俺の服がない。
「ああ。服ならさっき貴方が海を割った時に、余波でどこかに飛んでいきましたよ?」
「ウッソだろお前」
「ホンマです貴様」
えっ? 何? 俺、服なくしたの? このままこの世界では素っ裸で生きろってこと?
「……寒くないおじさん? はい、これ」
そう言ってカイル君が渡してくれたのは、持っていた野菜らしき植物の中の一枚の青々とした葉っぱだった。こ、これは……ッ!
受け取った俺はなんのためらいもなく、股間に装着した。すると葉っぱは俺の股間の逸物を隠したまま、地面に落ちることもなくフィットする。
まるでパズルのピースがぴったりとハマったような感覚に陥り、喜びに震えが止まらない。
そうか、お前は、そこに居てくれるのか……。
「あ、ありがとう……ありがとうカイル君……これで俺は……俺になったッ!」
ここに、俺は完成した。
まさか自分の歳の半分にも満たなさそうな子どもに助けられるとは……これが、人の、優しさ……ッ!
「……お家におとーさんの服もあるから、おじさん達来る?」
「……まあ、せっかくだしお呼ばれしようかな」
俺としては葉っぱ一枚あれば良いのだが、ぶっちゃけこの後やることも思いつかない。
「んま~~~~~~~ホントに良い子でちゅね~! ……ちなみにベッドのお部屋はあるかな~?」
「ベッド? 寝るところならあるけど」
「うんうん。あとでおねえちゃんとベッドに行こうね~、そこで一緒に気持ち良いことしてカイルきゅんを男にしてあげあふひばァッ!?」
ステータスちゃんの頭を俺は殴った、グーで。はーい、未成年の子どもに対するお触りは法律で禁じられておりまーす。
つーか人の事ロリコンだの性犯罪者だのと散々見下しておいて、自分だけ良い思いしようするとか許せん。徹底的に邪魔してやる。
そして絶対に貴様より先に幼女で童貞を捨ててくれるわ。
そんなこんなで、俺とステータスちゃんはカイル君に連れられて、彼の家へと向かうことになった。
『氏名:相山ハヤト
性別:男性
年齢:二十八歳
状態:葉っぱ隊(New!!!)
職業:ロリコン
取得スキル:ステータスちゃん』
ちなみに道中でステータスちゃんが見せてくれた俺のステータスは、状態の欄が更新されていた。うっし、これならオッケーだ。
連れていかれた先は、海沿いにある小さな一軒家だったっていうか現代日本家屋にしか見えないんだけどここ異世界ですよね?
家の中に入り、ソファーのあるリビングでカイル君がケトルで沸かしたお湯を使って緑茶を入れてくれるごめんもう無理ここが異世界だって思えないもっとファンタジーなもん寄越せよ畜生ォォォッ!
「……カイルきゅん。おとーさんとおかーさんは何処にいるのかなー?」
「……いなく、なっちゃったの……」
そんな俺の嘆きを余所に、ステータスちゃんの問いかけにカイル君がしょんぼりした様子で答えている。
「もともとほとんど家にはいなかったけど……ある日突然、お父さんもお母さんも黒い服の人に連れていかれて……それからずっと……ぼく、一人ぼっち、で……ッ!」
「あらあらあらあらッ! 大丈夫大丈夫、おねえちゃんがいるからね~ッ!」
堪えていた涙をボロボロとこぼし始めた彼を見かねて、ステータスちゃんが彼を抱きしめる。
共働きで仕事で忙しい家庭、って感じかな。ただでさえあまり触れ合えなかったお父さんとお母さんが全くいなくなってしまった悲しみは、想像に難くない。
「……安心してカイルきゅん。お父さんとお母さんは、必ずわたし達が連れ戻してあげるからッ!」
「ッ! ほ、本当ッ!?」
「当然ですッ! おねえちゃんにお任せッ!」
なんか勝手に決められた気がするが、まあ良いだろう。
俺に一枚の葉っぱをくれるようなこんな良い子が不幸だなんて、こんなの絶対おかしいよ。
「ああ、お兄さんに任せろッ!」
「おじさんもありがとう!」
「おじさんじゃない、お兄さんと呼びなさい」
微妙に噛み合っていないやり取りをして、お茶をご馳走になった後、俺とステータスちゃんはその家を後にした。
手を精一杯振って見送ってくれたカイル君の為にも、何としてもご両親を連れ帰ってあげたい。
「……つっても、どうやって探すんだよ? カイル君、ある日いきなり連れていかれたって話だけで、手がかりもクソもないんだけど?」
『そんなことはわたしに任せなさい。チョイチョイっと……ほら、見てください』
実体化を止めたステータスちゃんが頭の中でそう言うと、俺の目の前にステータス画面が現れた。
『氏名:相山ハヤト
性別:男性
年齢:二十八歳
状態:葉っぱ隊
職業:ロリコン
取得スキル:ステータスちゃん 例え便所の中に居ても息の根を止めてやる(New!!!)』
見てみると、なんか取得スキル欄に一つ追加されている。
「何この物騒なスキル……?」
『全てを探し出す探知のスキルですよ? これでカイルきゅんのご両親もすぐに見つけられるでしょう。ほら、さっさとやりなさい』
「スキル名は?」
『わたしの趣味です』
わー、良い趣味してるーゥ。
「つーか、これ俺がやるの?」
『当たり前じゃないですか。わたしはあくまで、貴方のステータスちゃんですよ? わたしにできるのは、貴方のステータスを弄って遊ぶ……もとい、お手伝いをするだけです』
言葉の端々に俺で遊ぶことしか考えてないのが透けて見えるんだけど、どうしてくれようかこのアマ。
『こんな風に』
そして一度ステータス画面が閉じられると、再度俺の目の前に現れた。
『氏名:相山ハヤト
性別:男性
年齢:八十八歳(New!!!)
状態:葉っぱ隊
職業:ロリコン
取得スキル:ステータスちゃん 例え便所の中に居ても息の根を止めてやる』
「な、なんじゃこれはァッ!? ゴホッ! ゴホッ!」
お、俺……ワシはいきなり大声を出した所為で咳き込んでしまったわい。ああ、喉がイガイガする。歳は取りたくないのう……。
「……じゃねーよッ! 何でいきなりジジイにされたんだよッ!?」
いきなり年寄りと化した自分の姿にびっくり仰天つーかどうなってんだよ俺の身体ァァァッ!?
『あっはっはっはっはッ! ね、年齢欄弄るとホントに歳取るんですね貴方、あっはっはっはっはッ!』
「笑ってんじゃねェェェェェッ!!!」
『……ちなみにこうしたらどうなるのかしら?』
再度ステータス画面が閉じられると、再び俺の目の前に現れる。
『氏名:相山ハヤト
性別:男性
年齢:八歳(New!!!)
状態:葉っぱ隊
職業:ロリコン
取得スキル:ステータスちゃん 例え便所の中に居ても息の根を止めてやる』
「って今度はショタ化してるじゃねーかァァァッ!!!」
はたと気がつくと、俺の身体が一気に幼くなっている。
不味い。こいつは重度のショタコンだった筈だ。こんな状態の俺を見たら、野生の獣の如く襲いかかってくるに決まって……。
『……うーん、微妙。四十点。他に選択肢がないなら、まあ……』
物凄く傷ついた。
結局は二十八歳に戻してもらい、探知のスキル[例え便所の中に居ても息の根を止めてやる]を頼りに、俺達はカイル君のご両親がいると思われる、少し遠目にあった海沿いの街へと向かった。
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