第6話 魔王様ですがなにか?
革鎧にマントと剣と盾。いかにも傭兵風な装備に身を包んだリオン。
お嬢様と執事、傭兵の護衛と組み合わせ的には違和感の無いものに仕上がったと思う魔王様。
「リオン、田舎者じゃないんだからキョロキョロしない。あとボロが出るといけないから寡黙キャラを演じろ」
オーケーボスとでも言うようににこやかにサムズアップする元獅子の大男リオン。
それは寡黙キャラと全然違うぞとツッコミを脳内でする。疲れたらしい。
ここは城下町の繁華街。昼間から何故か営業している酒場の奥の個室。周りに聞こえたくない秘密の商談などに使われる。
「二人に言っておく。今後人間の国の中では私のことはイチゴと呼ぶように」
魔王様の発言に対して、
「畏まりましたイチゴ様」
「わかったよいちごちゅわーん」
ぎろりと視線を向ける魔王様と固まるレオン。
「寡黙キャラはこういう時頷くだけでいんだからな。うんうんじゃなくうん一回。
してクロウ、人間の国と異世界人の動向の報告を。コイツにも教えてやってくれ」
「御意」
クロウとはクローニンの人間の国での名前。
「まず記憶の共有化をして分かっているとは思うが、人間の国と我が魔王軍は停戦状態だ。お前が見てきたのは魔王様による幻影だ。
そして異世界人は人間の国が召喚したものではない。
勝手に湧いてくるんだ異世界人は」
いつからかわからない。
この世界には他の世界の人間が迷い込む事が多々としてある。
共通事項としては、何らかのスキルを持ちそのスキルに引っ張られる形で性格も歪んでいるようである。
特に欲に絡むスキル保持者に顕著に出ている。
そんな欲が強化された異世界人がその対象に出会うと、理性など無くなり暴走する。それ故、城下町の人々の反応がああいうものになる。
「リオン、あのオタク服、いったいどこから入手した?」
「魔王城のすぐ近くで。キョロキョロしてた人間から剥ぎ取りました」
魔王様は頭を抱えながら聞く。
「嫌な予感がするが一応聞いておく。その人間はどうした」
「湖に捨てました」
やっぱり、とテーブルに突っ伏す魔王様。
異世界人を殺害すると、その人物が持っていたスキルが『壊れた状態』で殺害された周辺に漂う。
魔王様や魔王城周辺の魔王様配下の魔物には害は無いが、人間やモンスターがその辺りを通るとスキルを獲得してしまうことがある。
現状、壊れたスキルの除去方法は見つからない。時間経過でも霧散するわけでは無く、その空間を汚染し続ける。
それ故、魔王様はシステム権限を使いこの世界の外、異世界人が元いた場所へ強制送還しているのだ。
「今後、異世界人を見つけても殺害するな。必ず私に報告しろ」
「わ、わかりました」
魔王様の神妙な表情におちゃらけた反応ができず、まともな返答をするリオン。
「今日人間の国に来たのは、異世界人の出没の増加の調査と送還だ。
今朝だけでも五件確認している。魔王城に二件、人間の国に三件」
ここ最近、その異世界人の出没数が増えている。
「まだこの近くに異世界人がいる可能性がある。見つけ次第拘束、そして魔王様のお力で送還してもらう」
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