第4話 君はもふもふなフレンズだね?
魔王城いつもの屋根裏部屋。
よっしゃー掴みはオッケー!とばかりにガッツポーズを決めているのはパジャマ姿の魔王様。
勇者と明日会う約束を取り付けて幸せいっぱいな心地である。
良い夢見れそうとベッドに入ろうとした所で、
『お休みの所申し訳ございません。緊急事態にて回線を開かせてもらいました』
クローニンの声が直接脳内に響き渡る。
『何があった?』
魔王様の声に一拍置いてクローニンが答える。
『獅子が暗殺部隊を指揮して人間の国に侵入するところでした。全員眠らせてあります』
『わかった、すぐ向かう』
軽装装備で夜目の効く魔物が十体ほど、森の入り口で眠りこけている。
そのうちの一体、盛大ないびきをかいているのは先日の獅子の獣人。
恐らく勇者の首級を上げようと暗殺部隊だけに任せずに獅子自身も向かったのだろう。
「全員の首をはねますか?」
クローニンの言葉に首を横に振る魔王様。
「コイツらを殺した所で結局同じ様な輩が出るのは時間の問題だ」
「ではまたこの間の様に幻覚を見せますか?」
先月の進軍、魔王軍が表立って人間の国に攻め入った事実は無い。
魔王様による集団催眠で戦があったと思い込んでいるのだ。
「幻覚で骨折なんてする奴初めて見ましたよ」
「VRでタンスに腕ぶつける感じかなぁ。
それはともかく、また同じように勝手に動かれてもかなわん。気が進まないがこの獅子も事情を知ってもらおうか」
それを聞いて露骨に嫌そうな反応を見せるクローニン。
「コイツに共有化を図るのですか?」
「仕方なかろう。言葉で説得しても納得できないからのう」
そう言いつつ腕を捲る魔王様。
手のひらを獅子の額に当て目を瞑る。
わぁモフモフだぁと小声が漏れる。
「
脳が通常使う記憶領域とは別の場所に、意識する事で認識可能な記憶領域を作る。ここに魔王様の記憶を植え付ける事で記憶の共有化を図る。
ある意味洗脳に近い物があるのだがそんなに便利な物じゃ無い。
脳の中を弄る為、一晩知恵熱みたいな症状が出る。それはまだ良い。問題なのは……、
次の日。
「おはようございますでござるよ魔王様」
度の入った眼鏡に、格子の模様のワイシャツの裾はズボンの中。そして極め付けは七三のたてがみ。
本人の性格が魔王様の記憶に引っ張られておかしな事になると言う状態だ。
魔王様は頭を抱える。色々と突っ込みたい所があるがまずは、
「なんでこの姿の私を魔王って認識できるんだ?」
そう獅子に問うた。
「匂いでござるよデュフデュフ」
眼鏡をくいっとずらしながらそう答えた。
へ、変態だー!
オタクがまた一人、この世界に増えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます