第29話 つかの間の休息
~デデドン視点~
これまで私は、大変な努力をしてきた。
もちろん努力というのは、ファーナス王妃をはじめとしたえりすぐりのメスを集めて、私だけのメス奴隷ハーレムを作るという意味の努力だ。
けれども、正直、失敗続きだった。
ファーナス王妃の周囲にいる者どもはどれもこれも、金では動かない頑固者のみ。
フラット王を暗殺しようとしたものの、それも失敗。
そのうえ逆に、暗殺者が、ハーレム奴隷の一員にするはずだったシィファちゃんを死なせてしまうという愚かな失敗をしやがった!
仕方ないから、呪いをかけてフラット王は目覚めさせないようにしたものの、これまでの作戦がパーになり、次のチャンスまで、数年の無駄な時間がかかってしまった。
そして、今、魔族と手を組んだ大いなる作戦が動き出した。
もし成功すれば、この国のすべてを手に入れることが出来る。
長かった。
神というのはあまりに愚かである。
最初から私を王として生まれさせてくれれば、こんな努力や回り道などしなくてよかったのに!
……まあいい。
そんなことより、私にとってはいい意味で、思いのよらぬ事態になった。
「そ、それは本当でげふか! 王妃!」
ファーナス王妃の言葉に、私は耳を疑った。
そして、ファーナス王妃は、はっきりと私に言った。
「ええ、デデドンが提言した通り、王国内に入り込んだモンスター対策に、王国騎士団は外れてもらいます。そして、これからは民間の傭兵ギルド【コンドルの爪】を全面支援し、王国の各地域を防衛してもらうことにします」
なんと願ってもない事!!
自分の想定よりも早く、計画が上手く行ったからだ!
「はは! このデデドン、その言葉を首を長くして待っていたのでげふ!」
ははははは。
やった、やったでげふ!
ファーナス王妃は、この国の美女達は、この国は、もうすぐ私のものになるのでげふ。
「その前に、デデドンに仕事を頼みたい」
「はい。なんでございますげふか?」
「この国の領地を治める貴族を招いてパーティーを開こうと思う」
「……ああ、そういうことでげふか」
おそらく王妃の考えは、【コンドルの爪の派遣をスムーズに行うため】に違いない。
今、モンスターが大量に潜伏してるなか、パーティーを開こうなどとはふつうは考えない。
しかし、王国騎士団以外の兵士が、各領地の防衛を任せるとなると、何かと反発してくる貴族が出てくるのは簡単に予想できる。
ゆえに、王妃が直接、パーティーでこのことを皆に説明して納得してもらう、ということなのだろう。
「ええ、このデデドンにお任せくださいでげふ! 素晴らしいパーティーにするのでげふ!」
「ええ、開催は早めですが1週間後でお願いします」
「はは!」
こうして、私はうきうきしながら、パーティーの準備にとりかかったのだった。
***
~ツクモ視点~
俺は熟睡していた。
夜中まで働き詰めで疲れていたからだ。
モンスター共の問題が片付いた今、あとはゆっくりとデデドンを追い詰めるだけだ。
まあ、今はゆっくりと寝よう。
正午までは寝てよう。
「すぅ……すぅ……」
女性の胸というのは、たとえ小さくても、柔らかいと感じるのはなぜだろう。
本能的に魅力を感じるのは、大きい胸かもしれない。
けれども男心をくすぐられてしまうのは小さな胸だと思う。
どちらも素晴らしい。
どちらも柔らかい。
それでいいじゃないか。
…………なぜ俺は貧乳のことを考えていた?
細く目を開ける。
俺の部屋で、なぜかシィが眠っていた。
「すぅ……すぅ……」
シィの小さな体が、俺の腹にのしかかる。
「ぐえ」
おいおい、さすがに寝相悪くないか?
「うーん……あつい……ですわ……」
そう言いながら、シィは寝巻の下を半脱ぎにして、素肌を見せる。
見る位置によっては、パンツが見えるだろう。
寝巻の上も、涼しくなるよう、肌を露出させている。
……今は夏とはいえ、俺にくっついたらもっと暑いだろうに。
今の状況、誰かに見られたらひどい勘違いを受けそうだ。
とはいえ、今の状況を変えようとは思わない。
なぜなら眠いからだ。
毎日健康的に8時間以上の睡眠をするべきだと考えている俺にとって、今起きるのは理念に反する。
……というのは半分冗談で、正確には疲れて動きたくないというやつだった。
「むにゃむにゃ……」
そういって、シィは俺の体を抱きしめたまま、時間は過ぎていく。
やましい心を鎮め、俺は彼女の安眠を邪魔しないように、俺も安眠していた。
が、恐るべき事態が発生した。
「先生……シィを見なかった? ――あ」
この声はディアだ。
しかもなんということだろう。
そのまま扉を開けてしまったがために、俺とシィの見せられない姿を見たらしい。
「エッチなことしてる」
してない
と、言いたかったが、眠たくて口が動かない。
「……そろり」
ディアが近づいて来る。
ベッドの横に立ち、俺とシィを見つめる。
「……子供が出来るのかな?」
いやいや……
これで出来たら流石に困る……
彼女たちには、性教育を学び直させたほうがいいのかもしれんな。
ぴくん、とシィの体が動く。
「ふぁーあ、……ディア……おはようございますわ」
大きなあくびをしながら挨拶をするシィ。
「おはよう。……先生との時間……邪魔してごめんね」
そんなことを言うディアにシィは首をかしげたが……
「何を言ってますのシィ。先生との時間なんて……え?」
シィは横にいる俺の存在に気づいたようだ。
まあ、正直俺も起き上がれるくらいには覚醒していたが、下手に起きるのは嫌な予感しかし無いので、寝たフリをしていた。
「ふぁい!? なななななぜ先生がわたくしと一緒に寝てますの!?」
それはこっちが聞きたいな。
「ん? 先生と子作りしてたんじゃないの……?」
「そんなのまだ早いですわよ!?」
「その格好で誤魔化すのは無理がある」
「そんな格好って、ひゃん! 脱がされてますわ!」
自分で脱いでたぞ。
「先生のスケベ! エッチ!」
べしべしと、布団叩きのように叩かれる。
仕方なく起きると、半裸のシィとなんだかウキウキしてる様子のディアがいた。
「昨夜はシィと、お楽しみだった?」
シィは俺に、どうにか誤解を解いてくださいませ、と訴えかけるように見つめてくる。
ああ、俺に任せろ。
俺がシィの名誉を守ってやろう。
「シィは疲れているようだったから、体をマッサージをしただけだよ」
「マッサージ……」
「信じてくれるかい?」
「うん……無理」
そう言って、ディアは部屋から出ていった。
「……シィ、だめだったよ」
シィは顔を膨らませながら、俺を上目遣いで見てきた。
プリプリ怒っている様子だった。
「先生の……ばぁか!」
ちなみに、シィが俺の部屋にいた理由は、寝る前にトイレに行った後、俺の寝室に間違えて入っただけのようだった。
「ま、平和な日常もいいものだ」
そう、しみじみ思うのだった。
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