第20話 ツクモVSイビルワン

「馬鹿なメタルゴーレムが倒されるなどありえない……しかもあんな子供に?」


 このダンジョンの主、ダンジョンマスター、イビルワンはショックを受けていた。


 自分の作り出したダンジョン――仕掛けた罠のすべてに自身があったからだ


 それがこんな子供に攻略されるなんて信じられないのは当然だった。


「しかし、まだだ。まだ宝玉が取られたわけではない」


 宝玉さえあれば何度でもやり直せる。


 大丈夫だ。


 まだ最後のトラップが残っている。


 あの宝玉を手にしたら最後、ダンジョン全体がその構造を変えるという仕掛けが残っている。


 奴らは分断され、その上、それぞれに強力な罠やモンスターの数々が押し寄せる。


 合流も脱出もままならないまま奴らは死ぬ。


「それでは楽しませてもらいましょうか。人間」


 イビルワンは元の調子を取り戻し、くくくと笑うのだった。


***


「それじゃあ、宝玉を持って帰りますか」


 そう言ってビアンカとロイと俺の3人は黄玉のある場所にまで足を踏み入れた。


「先生はまだダンジョンに残るってことでいいんだよね?」


「ああ、ダンジョンマスターだけは退治する。お前たちはそのまま街で待っていてくれ」


「わかった」


 ビアンカは非常にきれいな宝玉を手にとった。


 ずがががが


 ダンジョン全体が震える。


 今まさに、トラップが発動したようだ。


「それじゃあ、行こうか。ロイ」


「はい!」


 二人はそれぞれ帰還アイテムを使用した。


 ダンジョンから一番近い街にまで瞬間移動する。


 もちろん宝玉をもったままだ。


「よし。あとはダンジョンマスターを倒すだけだ」


 ダンジョンの構造の変化が終わるまで、俺はしばらく待つのだった。


***


「やっと、お出ましか」


 俺は目の前の魔族をにらみつける。


 その男は地団駄を踏んでおり、まるで子供のようだった。


「ああああああああああああーーーーーーーー!!!!!!! 宝玉がぁぁあああああああああああーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」


「だったらダンジョンに隠さず、大切にとっとけば良かったのに」


「ずるいぞ!!!!!!! 帰還アイテム使うなんてずるいぞ!!!!!!!!!」


 よほどショックなのだろう。


 かわいそうに。


 同情はしないが。


「子供の魔族とは言え、人に手を出す以上容赦はしない」


「子供じゃない!! 100年生きた立派な魔族だ!!! 名はイビルワンだ!!!!」


 ようやく立ち直ったのか、やっと泣き止んだ。


「でもあなた一人残されたようですね。仲間から裏切られたのかどうか分かりませんが、どうでもいい」


 イビルワンの目には憎悪が宿っている。


 そして、今の俺の周囲のモンスターたちも俺目掛けて眼光を鋭くする。


「八つ当たりさせてもらいますよ、ニンゲン」


「メタルゴーレム10体、ゴブリンナイト、ゴブリンアーチャー、オーガがそれぞれ100体、あとは数えるのもめんどくさいほどいるな」


 俺は冷静に分析する。


「モンスターだけじゃありません。気づきませんか? この――」


「マジックカウンターのことだろ。もちろん分かるさ」


 マジックカウンターがある以上、魔法を使えばこちらにダメージが跳ね返る。


 この数のモンスター相手に、素手での戦いは骨が折れるだろう。


 しかし――


「十分勝てる。余裕だな」


「戯言だ。さあ者共よ!!!!! この男を殺せ!!!!!!!」


 ありとあらゆる物量が押し寄せる。


 まるでドラゴンの群れがアリを轢き潰しにくるようだろう。


 無論、俺はただのアリではない。


 最強の師匠から学びを得た、最強の魔法使い。


 そして、新たな魔法使い達に道を示す、先生だ。


 負ける理由が無い。


 俺は呪文を唱えた。


「バカめ!! 気が狂ったか?? マジックカウンターでダメージが跳ね返れば、お前は死ぬ!!!」


 イビルワンが吠える。


 俺はその言葉を無視。


 呪文を発動させた。


「神級魔法、ブラックホールポイント」


 俺の右手の人差し指に、小さな黒い球体が現れる。


 その瞬間――すべてのモンスターはその球体に吸い込まれた。


 跡形もなく、すべてのモンスターが消え去った。


「え……………………?」


 イビルワンは呆然としていた。


 信じられない光景だったのだろう。


「これまでこしらえたモンスターが全滅……? マジックカウンターがいつの間にか解除されている……? なぜだ……? 何をしたんだ……? それに、神級魔法だと……?」


 イビルワンは、はっとした後、俺にこう尋ねた。


「……きさま、もしや……ツクモ・イツキか……?」


「そうだ」


 その答えを聞いた瞬間、イビルワンの表情は絶望へと変わったのだった。


***


(いいや、まだだ!!! 私にはこの魔吸収の指輪がある……! このアイテムがあれば、相手の力を奪うことができる!!! 相手のスキをつけば……! チャンスが……!)


***


「神級魔法――」


「ま、待ってくれ! 交渉しようではないか?」


「だめだ」


「つ、ツクモさまにも利益のある話ですぞ! ベルゼーブ様に私から紹介しようではないか! 今よりも破格の待遇を約束――」


「くどい」


 俺はそう断言した。


「その指輪がお前の最後の手段なのだろ?」


「!?」


「タネが割れてるのに、スキを見せるはずがないだろう」


 そして、俺は最後の詠唱を終えた。


「神級魔法、ホワイトホールバースト」


 俺の人差し指に浮かんでいた黒い点から白い輝きを放つ。


 ブラックホールポイントとホワイトホールバースト


 その2つ合わせて一対の魔法である。


 ブラックホールポイントで相手の肉体や魔法そのものを、魔力に分解した上で、一点に吸収する。


 マジックカウンターが発動しなかったのは、この魔法によって、マジックカウンターごと吸収されたからだ。


 そして、ホワイトホールバーストで一点に集めた魔力のすべてを開放して、相手にぶつける。


 今の魔力量だったら、あの程度の魔族には十分すぎるほどだろう。


「ぎゃああああああああああああああーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」


 イビルワンは断末魔を上げ、消滅した。


「これで終わりだな」


 すべての敵が消えたことを確認した俺は、ビアンカ達が待つ街へと戻るのであった。





―――――――――――――――――――


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