第5話 生徒達と一つ屋根の下で
〜ビリー視点〜
俺は煮えくり返る怒りを胸に押し込み、教室の机に座っていた。
あんなGクラスの、
殺す、殺す、殺す……全員まとめて殺す。
心のなかでつぶやき続けた。
ガラガラ
扉が大きな音を立てて開いた。
「みんな、グレゴーラ先生からの伝言だ」
クラスの委員長が扉からそう叫んだ。
「『Gクラスの連中を徹底的にぶっ潰せ。そうすれば評価を上げるよ』、だそうです」
クラスの連中の目の色が変わった。
おそらく俺もその中の一人だろう。
楽しみで仕方ない。
「あのゴミどもをぉぉ、潰せるぅううう!」
俺はハイテンションで叫んでいた。
***
〜ツクモ視点〜
放課後、今日することはすべて終わり、寮に帰る事になった。
「ここがGクラス専用の寮……少し古いが悪くないんじゃないか」
「実はもともと、ただの女子寮だったんです。けど新しい寮が別に出来たので、他のみんなはそっちに住んで、私達だけは残されたんです」
「なるほど」
俺はアドリー、ビアンカ、シィ、ディアの4人と一緒に寮に帰っていた。
一緒に住むことになった、と話したら、意外なことに、嫌という意見が全く出なかった。
これまで4人だけで暮らしており、不安でしょうがなかった、とのことだ。
「食事も家事も洗濯も、私達4人だけでやってたんだ。いやぁ、先生が手伝ってくれるなら楽ができるよ」
「無論だ。俺も手伝うよ」
ビアンカとそんな話をしながら、中に入った。
「ここが私とアドリーの部屋。その奥にあるのが、シィとディアの部屋」
どうやら、1部屋に2人が入って暮らしているらしい。
「わたくしとディアの部屋には、なるべく入らないでくださいね!」
シィはそう、俺に釘を刺した。
「私は別にいいけど……シィが気にするなら……ごめんね先生」
ディアに謝られた。
「謝る必要はないさ。ありがとな、ディア」
ディアは朗らかな笑顔だった。
「えー、私は先生なら大歓迎だよ! いつでも私たちの部屋に遊びに来てよ! ねー、アドリー!」
アドリーは照れているのか、目を下にそらしながら言った。
「えーとね……着替えてるときとかはあれだけど……ツクモ先生なら来てほしいな……」
「……わかった、時々遊びに行くことにするよ」
「っっ……!」
俺は彼女たちの気持ちを考えていたら、そう答えていた。
アドリーの顔はとても赤かった。
アドリーの反応を見てしまい、何故か俺も体温が上がるのを自覚した。
……多分、俺自身も変な気持ちになってるかもしれんな。
「あー、今日は俺が手料理をごちそうしよう」
俺は話題を変えた。
「えー! 先生作れるの!」
アドリーは驚いた。
「少しな」
そうして、俺は料理を彼女たちに振る舞った。
「先生のシチュー美味しい!」
「けっこうイケるね! いやー私もやっと楽が出来るね!」
「ビアンカさんはそんなに料理作らないじゃないですか……美味しい……ホクホクして安心する味ですわ」
「……とっても美味しいよ」
結構好評で嬉しい気持ちになった。
***
〜6年1組の壮絶ないじめ〜
翌日、グレゴーラ先生の言いつけを忠実に守る生徒たちから、Gクラスへの攻撃が始まった。
***
「ひっひっひ。靴箱に、このサソリと毒虫たちを入れよう」
俺はそうつぶやいた。
朝一番、誰もまだ登校してきてない時間に、俺は学校の靴箱の前に来た。
一番乗りでGクラスを攻撃する、これはきっとグレゴーラ先生から高く評価されるに違いない。
虫かごから自分のペットであるサソリを慎重に取り出し、準備した。
そしてビアンカと名前が書いてある靴箱を開けた瞬間、ピカリ、と閃光がほとばしった。
「ぎゃ!! 目が!!」
驚いた俺はつるっと手を滑らした。
そして虫かごに入れてたサソリと毒虫がすべて飛び出し、よもや飼い主である俺に噛み付いた。
「あ、あ、あ、……ぐるじいぃ〜 ぐるじぃよ〜!」
その場には誰もおらず、病院に運ばれたのは、俺が悶え苦しんでから20分後のことだった。
***
「いたぞ、Gクラスだ」
廊下を歩いていたのは、青い髪のと、金髪の生徒の二人だ。
「へっへっへ、特に弱そうな奴らだ。直接痛めつけてリンチにしてやる」
こちらは10人がかり。
その上、成績が二番目のビリーもメンバーに入ってる。
そもそもGクラスの女なんかに負けるどおりも無い。
「クソアマ共ぉおおおおお喰らいやがれええええええ! おらぁ!!」
真っ先にビリーが突っ込み、殴りつけた。
「……?」
なんだか様子がおかしかった。
本来ならここは廊下のハズなのに、なぜか、いつの間にか外の、しかも裏路地の暗い場所に俺ら10人は立っていた。
そして、1番乗りに殴り込んだビリーの殴っている相手は、Gクラスの女子ではなく、
ラクロア魔法学園の中等部内では超有名の――不良の胸板を殴りつけていた。
「ああ? 何してくれとんのや? 急にお前ら出てきよって」
「ひ、ひぃ!!」
ビリーはジョボジョボとおしっこを漏らす。
そう、ここは中等部の裏路地で、不良のたまり場だった。
その規模、こちらの5倍の50人だという。
「ゆるさねえぞ。
なぜ、初等部の校舎にいたはずなのに、今は中等部の裏路地にいるのか?
転移したとしか思えない。
もし転移する魔法が使われたなら、その魔法の階級は、超級……もしかしたら覇王級かもしれない――もし覇王級なら、人類最強クラスの化け物がこの学校にいるということになる。
――そんなのは絶対にありえないだろう。……そうに違いない。
いろいろ考えたが、俺には何もわからなかった。
「ぎゃああああああああ!!! やめて!! やめてください!! お願いし――ぎゃあああああ!!!」
そして俺達はビリーの断末魔を聞きながら、俺を含めた残りの9人で、目の前の不良たちに許してもらえるまで土下座し続けた。
***
ウサギ小屋から銀髪の背の高い少女が出てきた。
「あの生徒はどうやら、毎日ウサギ小屋に通ってるみたいだ」
ニヤリと笑う。
あの少女がまた、ウサギ小屋に来たとき、みんな死んでいたらどんな顔をするだろうか?
楽しみでたまらない。
中に入ると、4〜5羽のウサギがいた。
「さあ、一羽づつ殺してあげるよ! 中級ま――」
「みのがして」
突然、声が聞こえた。
「ぼくたちは、ただの、かわいい、うさぎだよ」
一瞬、目の前のウサギが喋ったかと思った。
しかし、よく聞くと、声は後ろの方から聞こえてた。
「誰だ!!」
振り返ると、大人の男よりも更に一回り大きい、巨大ウサギが目と鼻の先に佇んでいた。
「ぼくたちは、ただの、かわいい、うさぎだよ」
・
・
・
「……はっ!」
あれ、なんでこんなところで寝ていたんだろう。
外はもう暗い。
うさぎ小屋……こんなところに用なんてないのに……
ぼんやりとした頭を抱えて、寮へと足を運び始めた。
***
〜ツクモ視点〜
「うふふふふ! ココアはかわいいね!」
「ありがとー、でぃあ!」
「本当にディアはウサギが好きですわね」
ディアは、スーパージャイアントラビットであるココアに抱きついていた。
10年前、俺の友達――ココアは普通のウサギだったのだが、師匠との修行の末、スーパージャイアントラビットに進化しており、今では俺よりも背が高くなっており、なおかつ言葉も話すようになっていた。
「ココア、ウサギ小屋を守ってくれてありがとう」
「つくものためなら、おやすい、ごようだよ!」
いつもは使い魔保管用のスクロールを使って持ち運んでいるが、今はウサギ小屋を守らせている。
ココアは恐怖付与(相手を動けなくする、もしくは気絶させ、直前の記憶を奪う)というスキルを身につけており、多少の戦闘も可能だった。
「他の人たち、本当に私達に何もしてこなかったね」
アドリーはそう言うと、ビアンカが訂正した。
「何もしてこなかったんじゃなくて、何も手出しが出来なかっただけだよ。ツクモ先生がなんかわかんないけど、ピンポイントで色んな罠をいっぱい仕掛けたようだよ」
「いじめられっ子の経験をここで生かすことが出来るとはね」
奴らがどんな方法でいじめてくるのかが分かっているならば、対処は十分に可能だった。
例えば、別の人が悪意を持って靴箱を開けたら上級魔法フラッシュを発動させるトラップを仕掛けた。
他にも、敵意を持った誰かが、アドリー達に近づいた場合、覇王級魔法ワープが発動し、ラクロア魔法学園敷地内のどこかに飛ばされるというものも仕掛けた。
他にも多数のトラップを用意したことで、彼女たちの安全を守った。
ただそれだけの話だ。
「全く、こんなにすごいツクモ先生がいじめられて、しかも退学させられるなんて全くおかしな話ですよ」
アドリーは俺が経験した理不尽さに、怒りをあらわにした。
「まあ、それは過去の話。今は授業に集中だ」
「はい!」
俺たちは休憩を終えて、再度、授業を始めた。
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