第49話『オート?』【二人の娘編】

 私は、チラリとソフィアさんのメモ帳をのぞき込んだ。……落書きを書いてた。なんか、よくわからないブタとウサギのキメラみたいな雑な落書きだった。


(ふーん。……私の査定とかしてるわけじゃなかったんだね。へぇー。まあ、いいけどね?)


 そもそも業務時間中に落書きとか、仕事人としてどうかと私は思った。


(まあいいや。仕事なんて、それくらいのスタンスじゃないやってられないものなのかもね)


 私は、そっとソフィアさんの手元から目を離した。私の視線に気づいたのか、ソフィアさんがあわてて私に話題を振ってきた。別に気にしてないからあわてなくても良いのに。


「こほん。えーっと、ポルカさんの【オート】ってどんなユニークスキルなんですか?」


 本当に興味があるかは不明だが、そんな感じの質問をしてきた。ユニークスキルの保有者は1万人に1人と言われている、生まれ持ってのスキル。

 

(とはいっても、珍しいからと言って必ずしも全てのユニークスキルが有益な物とは限らないんだけどね)


「正直、ポーターしかしてこなかったのでろくに使ったことがないんですよね」


「なら、せっかくだから今日試してみましょうよ」


 確かに、せっかく時間があるんだからスキルの検証も悪くないだろう。ものは試しだ。減るものではないので私は自分にオートを使用した。


「おお。なんか力がみなぎってくる、気がします」


 オートを使用した状態でコボルトが接近してきた。気がついていたら私は手に持った杖でフォン、フォン、フォン。一瞬のうちに3体のコボルトをケチらしていた。


「おぉ……。凄い動き。一流の前衛職でも、ここまでの動きはなかなかできませんよ?」


 ソフィアさんが若干興奮気味だ。というか、正直私も驚いた。まるで自分の体じゃないみたいに魔物をケチらしていた。


 というか、私が認識していない魔物すら探し当てて叩き潰していた。どういう理屈か分からないが、とにかく凄い。そろそろエンジンがあたたまってきた。ここからが本番だ!


「では、ポルカさん。今日は帰りましょう」


「えっ、もうですか?」(……私の検証は?)


「えへへ。定時ですので」


 デスヨネー。


「大丈夫です。8時間働いたことにしておきますので、大丈夫です」


 とのことだった。

 定時なら仕方ないね。


「ソフィァさんこれから用事とかですか?」


「はい。ハッピーアワーです」


「ハッピーアワー」


「はい。ハッピーアワーです」


 ハッピーアワーだから業務を早めに切り上げて直帰。飲まなきゃやってられないこともあるのかもしれない。まあ、私はアルコール弱いので飲まないけど。


 リフレッシュのための多少のサボタージュはギルド職員の権利として認められるべきだろう。彼女の上司がどう査定するかは知らないけど。


「ソフィアさん、今日一番の笑顔だったな」


 にこにこ笑顔のソフィアさんを見送った。スキップをしながら酒場に向かっていった。とても嬉しそうだった。一日一善、よいことをしたあとは気分がいい。


 私は適当な場所でメシを食って、宿屋に戻り、ステータスウィンドウを確認する。レベルアップ後のステータスを確認するためだ。



 ――――――――――――

 名前:ポルカ

 LV:3↑(+1)

 筋力:8↑(+3)

 体力:6

 魔力:8

 速さ:15↑(+2)

 幸運:11↑(+1)

 特殊:オート

 ――――――――――――



 布団にもぐって、ちょっとだけモゾモゾしたあと、寝た。

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